[コメント] 機動戦士ガンダムUC episode4 重力の井戸の底で(2011/日)
ジュアッグやゾゴック、カプール、バイアラン、イフリート…その他枚挙に暇のないMSたちが互いにおのれの首を、胸を、手足を引きちぎりあう地獄絵図。しかしそれは理解しあえるはずの人々が無機質な仮面をかぶり、オタ野郎どもを狂喜させる冷酷なるデスマッチの綴れ織りだ。
ああ、俺だってこんな戦争を幾度夢に描いたことか知れんさ。
そして阿鼻叫喚のさなかに、青臭い厭戦を最初から喚き散らしていた主人公少年は最後までその「減らず口」を叩き続ける。なんという首尾一貫だろう。その時点でこの物語はなんちゃって反戦(実は格闘ロボット活劇)であることを止める。そして全ての兵器を供給する巨大軍需企業「アナハイム・エレクトロニクス」に等しい玩具会社の「罪」を露わにするのだ。つまりは、その得意客である俺の罪をも厭戦少年バナージは突く。でも、どうせHGUCモデルでのリリースが決定した「コアラロボ」ことジュアッグの発売日には、俺は嬉々として模型屋に向かうことだろう。
かなりきつい図式なのは判っている。今までのガンダムシリーズに増して、ファッショ国家から小規模テロ組織にまで落ちぶれた「ジオン」の戦いの意味は色濃く、悲壮感と背水の陣を敷くその姿の美しさは例えようもない。だから、満身創痍でそれを迎え撃たねばならない連邦軍にも分がある以上、悪は戦争によって潤う人々と、戦争に心躍らす俺たちであるわけだ。
この事前知識なしに理解困難な、ひねくれた活劇を果たしてティーン以下の少年たちが喜ぶのかはしれないが、青くこっぱずかしい理屈でオトナに敢然と立ち向かうバナージがひとりでも多く存在して、戦争を消費するオタどもを蹴散らしてくれることを望まずにはいられない。それは多分、我々に近い世代である作者たちの願いでもあろうから。
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