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[コメント] 天の高みへ(1977/伊)

単なる涜神のパノラマと舐めていたが、この衝撃度は高い。トーマス・M・ディッシュの某小説の雛型のような凄惨さ、そして最後に人々の前に現われる存在の皮肉。ルイス・ブニュエルとも一味違ったミニマムな崩壊に眼を奪われた。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







低予算の群像劇にしてこの惨状の再現は凄い。見せられるモノだけを見せて立派な惨劇を成す。これは悪趣味描写でお茶を濁す凡百の演出家に見習ってほしいところだ。良識ある人々の仮面が、さながらカサブタをはがすように血を吹き出してはがされる経緯は素晴らしい。そして自滅していった訪問者たちのもとへ待っていたかのように現われ、死者たちを看取ったのち「奇跡」をおこない何事もなかったかのように蘇生した人々を送り出す法王の怖ろしさ!涜神とはこういう風におこなうものだ、と世のアナーキー監督たちに噛んで含めるように示したシルヴァーノ・アゴスティの才気には言葉もない。さすがに世評は嘘ではない。彼は賞讃に値する映画人だ。

念のため。ディッシュの小説とは『人類皆殺し』です。誤解を招きそうなので敢えて伏せました。

(評価:★4)

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