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[コメント] リベリアの白い血(2015/米)

貧困に喘ぐ母国で、家族のため働き続ける寡黙な男。リベリアという国の成り立ちを見れば、彼はリベリアの希望なき国民のアレゴリーだと知れる。「白い血」とはゴムの木が流す樹液であり、それを集め続けるのが彼の人生だ。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







リベリアは合衆国に奴隷制が許されなくなった時代、もと奴隷の自由民たちの受け皿として白人層がアフリカに用意した国家と知った。要するに厄介払いの結果である。シスコはそんな貧しき元奴隷の子孫の象徴であると知れば、ことはアフリカの一国の問題ではないとわかる。

彼は勤勉であり、口癖のように仲間らの叱咤に「よく判らない」と吐き捨てる。彼はチップの類を頑として受け取らない頑固な仕事人間であり、他国でもよくいる正直者だ。だが、アメリカ政府が「そうあってほしい」と願う理想的な奴隷根性の持ち主でもあるから、ここに終わりなき悲劇がもたらされる。ストライキにも同意できない感情を抱え、邪魔する奴は消えて欲しいと願って仕事に没頭する。だから、最終的にもと戦友だった男が彼に揺さぶりをかけたとき、偶然走り抜けようとした車にはね飛ばされた戦友を一顧だにせず、彼は日常に戻ってゆくのだ。彼のそんな感覚を蔑むことは自分にはできない。日本人である福永壮志という監督も、そういう彼には感情移入しやすかったのではないか。

やはり、国の貧富を思わずとも、日本人は彼と同じ意識を共有している。真面目な勤労者が讃えられるこの国では、やはり「暮らしを考え直す」ということは悲しいが困難なのだ。

(評価:★4)

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