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[コメント] 少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録(1999/日)

あらかじめ失われた王子によって呪縛された少女たち…「共犯者」たちの解放の物語。TVで語られたそれとは別であり、先鋭的でよりラディカルに産み直された世紀末のお伽話。(永井豪『バイオレンスジャック』のネタバレもあり)
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この物語のふたりの主人公…ウテナとアンシーは、ともに自ら生み出した幻想の男性原理によって支配されている。ウテナの場合は幼き日に溺れた少女を救おうとして逆に溺死してしまった恋人であり、アンシーの場合は自らの兄であり、忠誠を誓う主人でもある「王子」…この物語世界を支配する人物だ。彼もまた死んでいる。ウテナは、王子とこの世界によって公的な娼婦に身をおとしているアンシーを救おうと試みる。

このエピソードが、永井豪の『バイオレンスジャック』と通じているのは興味深い。四肢を切断され、「人犬」として扱われている飛鳥了が実は破滅した世界の再創造主サタンであり、彼の迷いを振り払う「バイオレンスジャック」こと不動明によって世界は救われる。

だが、「ジャック」と「ウテナ」の根本的な違いは、前者が再構築された世界を肯定し、それを守ろうとして闘うのに対し、後者はむしろ創造された世界からの脱走を許さない原理そのものと戦い、見渡す限りの廃墟である外界へと走り去ってゆくところだ。

幾原邦彦はこれを通じて若者にハッパをかけている。既存のワクを破壊して荒野を行け、と。監督と近い世代の俺は、それを男ではなく少女の口からしか語れないことを残念に思う。だが、確実にいま輝いている世紀末から新世紀にむけての少女たちをパワフルに描くことは間違いではない。少女たちの未来に、幸あれ。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)Kavalier[*] たかやまひろふみ[*] 甘崎庵[*]

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