何もかもが恐ろしくなってしまった。

最も愛し、心を傾けたものまでが。

いや、だからこそ恐ろしい。奪われることが。ならば、自分の手で打ち捨ててしまえばいい――

明かされていないのは、たった一つのことに過ぎない。それも、隠されているわけではない。説明されていないだけで、実は観客はそれを観続けている。ただ、その約束事を守って物語を紡ぐ、その作業ひとつで映画はこんなにも深みを増すのだ、ということに、まずは感嘆する。

とにかく、この映画は説明をしない。画を、見せる。そのことによってのみ観客に全てを伝える。