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[コメント] 存在のない子供たち(2018/レバノン=仏)

この手の映画を見るといつも考えてしまうことがある。生まれた国や人種だけで人生が決まってしまう人たちがいるということ。食うに困る程の貧困や身分証明さえも持たない人たちがいること。日本国内の貧富の格差など大した問題ではないとうこと。
IN4MATION

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







物語全体を通してみると、ラヒルが不法滞在で勾留され、そこからしばらくゼインとヨナスふたりきりの生活が続く。

この、子供による子育て奮闘記が涙を誘う。

勾留されたラヒルが泣きながら乳を絞りヨナスに詫びるシーンが印象に残る。

また、ラヒル親子の仲睦まじさを見てゼインが涙を流すシーンも印象的だった。

ほんの数日一緒に暮らしただけでもゼインはヨナスに情が湧いている。

シリア難民キャンプで一番に欲したものはミルクとおむつ。

何度も置き去りにしようとするが結局心配になって戻ってきてしまう。

アスプロにヨナスを託す際にも涙を見せる。

ゼインは過酷な家庭環境に育ちながらも人並み以上の愛情を持っているのだ。

自分は決して愛されて育ったとは言えないのに。

サハルが死んだばかりだと言うのに、両親はまた子供を作り生もうとしている。

「女の子が生まれたらサハルと名付ける」という母の言葉にゼインは両親を見限る。

法廷シーンではやはり「育てられないなら生むな」が響く。

ゼインとヨナス、ふたりきりの生活がここで活きてくる。

子供でもできることがどうして大人ができないのか。子育てなんて生んだものの当たり前の責任じゃないか、と。

ラスト、ヨナスは無事出国させられるラヒルの元に返され、ゼインには身分証明書が発行される。

特にゼインの笑顔で終わるラストカットは心に残る。

ハッピーエンドとも思えるが、裁判の結果ゼインの両親にはどんな判決が下ったのか示さないのはやや不親切だと思った。

(評価:★4)

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