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[コメント] スウィート・ノベンバー(2001/米)

突然、
してんちょ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 この映画はイギリスのHMVで2本DVDを買うと1本タダという企画に入っていたので、WEB上で見たあらすじに引かれた事もあり、ついつい買ってしまいました。 ちなみにもう一本は『デンジャラス・ビューティー』でした。

 ともあれ、封を切って見てみましたが、とりあえず泣けました。 たしかに不自然です。 浜辺を犬たちと駆け回り、ラジコンヨットレースでアブナーを必死に応援する、あの元気あふれるサラが突然顔面蒼白で "I'm sorry." とか言い出してしまうんですから。 彼女が病の身であると伺えたシーンは、ゲイの友達とのパーティーの席(ただそこでは家庭の事情が複雑なだけと思ったけど)、そしてアーニーを返却する前の、首筋に水をあててほてりを冷まそうとしているようなシーン(ここも家庭の事情でうろたえているだけだと思った)。 これらの私の誤解からも明らかなように、自分の病と家庭の事情、ラスト近くでこれらが共に結びついていることは明らかになりますけど、これら二つの謎を一度にばら撒いてしまったために、サラという人物がただの家庭に反抗する不良娘なのか、病を背負って普通の生き方が許されなくなった悲劇の人なのか、いまいちつかみづらくなっている気がします。 ここはきっと製作者側の好みのせいでしょうね。 病気のサラをあえて途中で描かないことで、観客を驚かせたかったのかもしれません。 描いてしまったら、ラストの展開も容易に想像できてしまいますから。 

 これも製作者の好みなんでしょうが、ネルソンがサンタの帽子をかぶって12のプレゼントを渡すシーンも最後が突然で普通の観客だったらついていけません。 たしかに一つ一つプレゼントを渡していくシーンは泣けます。 ネルソンが今までのサラとの思い出をいかに大事にしていたかがわかるシーンです。 でも疑問。 なぜカツラ? なぜ鞭? ダンスの教本とかはわかりますけど、ちょっと思い出からは遠すぎるのではという感じがします。 そしてなぜ12? 月の数を意味しているのなら11の方が、1年巡って翌日からまた11月がやってくるという意味で説得力があったかもしれません。 そして突然歌いだすネルソン。 サラのおかげであれだけ弾けられるようになったのを示すのはいいですけど、前述のとおり、ついていけません。 もうコメディーで、悲しくて泣いていたのが、おかしくて泣き始めます。 やはりちょっとアバンギャルドすぎたのではないかと思われます。

 こうして振り返ってみると、この映画、予告を裏切る作品ではありました。 ただそんなに悪い作品ではありません。 私たちはサラと同じで死を背負っています。 ひとつ違いがあるとすれば、それがいつおとずれるかがわからないということだけでしょう。 家族を離れ、不自然なルールを作り、イレギュラーな生き方をしていたサラは、自分の生きる意味を見出そうとする、普遍的な人間の営みを映画流にデフォルメしただけにすぎないと思います。 そして、戸惑いの末にネルソンの手を振り払って、完全な思い出(Immortality)をとったサラの選択(そしてその選択に同意するネルソンの選択)にも、死と向き合った人間の心境が映画流に描かれていていいのではないかと思います。 

 人を変えようとして自分も変わっていく、そんな模様を映している作品はけっこういけるものです。 あとはエンヤの歌に媚びなければ・・・

(評価:★4)

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