コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] やぶにらみニッポン(1963/日)

1964年東京オリンピック前年の東京を舞台とする。主要登場人物を先に書く。まず主人公は、米国人で高名な物理学者という設定のジェリー伊藤。あるいは、彼の日本滞在記事をモノするために追いかける週刊誌記者の宝田明、そのいずれかと云っていいだろう。
ゑぎ

彼らの相手役として宝田のカノジョの白川由美、京都弁が達者な外国人娘ムーザ・ケマナイがからんで四角関係が発生する。またこの4人とは別に国際カップル、E・H・エリック若林映子がいて、ラストはこの6人の行く末が示される、という展開だ。

 6人が最初に揃うのが、銀座あたりのバーのシーンで、若林がエリックに自分は広島の戦災孤児だと云い、ケロイドがあると見せる場面に驚かされた(画面ではっきり捉えられはしないが)。また、ケマナイは小柄だがとても可愛い女優で、宝田がちょっかいをかける。すると宝田は白川に殴られて、宙を吹っ飛ぶスローモーションが挿入される。といった感じで完全なコメディシーンも多い映画だが、それほど笑える場面はない。ただ、今見ると興味深い、というシーンは沢山ある。

 いくつか例をあげると、ジェリー伊藤が、石川進の運転するタクシーで、下町を走る場面では、やみくもに道路を掘り返す工事と混乱した標識の設置を強調する。一方通行なのに転回禁止で動けなくなった車を降り、仕方なく歩いて行くと、地下鉄工事の穴に落っこちる。落ちた穴の中では、人見明たち役人が、責任を押し付けう。また、本作には十返肇寺内大吉という二人の作家が出演しており、十返は作家役、寺内はお坊さん役だが、2人とも科白が沢山ある役で、しっかりと演技しているのだ。特に寺内はナマグサ坊主で、寺へエスコートガールの北あけみが派遣される場面では、ホームトルコという言葉が使われるが、寺の中にスチームサウナとマッサージ台が常設されているという描写がある。

 また、本作のもっとも良いと思ったシーンは、伊藤の墓参りのシーケンスだ。富士山が綺麗に見えるロケーション。これに白川が同行しているのだが、白川がホテルに帰ると、宝田が待っている。こゝの二人の会話場面のカッティングが絶妙なのだ。縦横無尽なカメラポジションで、なんと木目細かく見せることか。明らかに笑いを狙ったコメディ演出はイマイチだが、こういう会話シーンの演出が、鈴木英夫の真骨頂だろう。こゝから、すぐ次の場面で、まだ17歳ぐらいの木の実ナナと、男子4人(これがジャニーズあおい輝彦が若い)のステージシーンを繋げる、こゝもいい。尚、木の実ナナには、十返と寺内の対談番組に参加するシーンもあり、サリドマイドについて、冗談を云う部分は流石にどうかと思う。この映画、前半より後半の方が調子が良いと感じたが、最終盤、小林桂樹(本人役)が司会をする3組合同結婚式から羽田空港への話の運びは予想通りで驚きの無いものだ。しかし、最後の、ケマナイの日本趣味が昂じて、水洗トイレを汲み取り式に改造した、という話には笑った。

#備忘でその他の配役等を記述します。

・旅客機内でジェリー伊藤の隣に座っているのは若水ヤエ子小川安三。最初の羽田空港のシーンで出て来る代議士は上田吉二郎

・週刊ジャパンの記者たち。編集長は草川直也、他に田中邦衛宮田芳子ら。

・ジェリー伊藤のオジサン夫婦は、松本染升三田照子だ。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。