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[コメント] シェナンドー河(1965/米)

南北戦争時期を舞台にした西部劇だが、活劇的要素は余りなく、父親のジェームズ・スチュワートを中心にした、ほとんどホームドラマのような映画だ。家業は農業および牧畜業で、息子が6人と娘が1人、息子の嫁1人が一緒に暮らしている。
ゑぎ

 前半は特に牧歌的というか、緩い演出が多く、冒頭近くの教会の場面等、何をしたいのかよく分からないシーンもあるが、父と末の息子が、夜、娘が彼氏と一緒に歩いているのを見るシーン等、緩さが良さでもある。

 スチュワートはバージニア州、南軍側に住んでいるが、戦争に加担しない厭戦論者だ。南軍兵士が、徴兵目的で訪ねてきたり、はたまた、北軍側が馬の徴用の話でやってきたりする。北軍側の男たちと、唐突に家族総出での殴り合いになるコメディパートもあるが、複雑な背景もあり、あまりスカッとしないシーンだ。

 さて、特記すべき配役について記しておこう。息子たちの兄弟関係は、ちょっとよく分からないところもあるが、多分グレン・コーベットが長男で、パトリック・ウェインが次男ではないかと思う。長女はローズマリー・フォーサイス。ウェインの嫁がキャサリン・ロスで、女優二人はともにデビュー作だ。二人とも、デビュー作とは思えない落ち着きがある。また、とても綺麗に撮られている。フォーサイスの恋人役で南軍兵士のダグ・マクルーア。スチュワートがマクルーアに、女性の扱いを諭す場面は、なかなか興味深い。何があっても、優しくハグすることだ、と云う。(ジョン・ウェインの映画とは女性の扱いが違うのだ。)

 また、スチュワートには、奴隷を使わず自分たちの力でやってきた、という強い矜持があったり、隣家の黒人少年が北軍によって解放され、自由に道を歩いていく象徴的なカットがあったりと、リベラルな姿勢を西部劇に盛り込もうともしている。描き方としては薄っぺらいが、こういう部分を評価する向きもあるのだろう。(IMDbで7.3ポイントって、思ったよりも高評価。)

 さて、後半は、スチュワート一家にとって、かなり厳しい展開になり、牧歌的な良さが消えてしまうのだが、結局、コーベット、ウェイン、マクルーアともに見せ場なく終わってしまうのも、とても落ち着きが悪い。

 ただし、ウィリアム・H・クローシアの撮影は相変わらず素晴らしい。屋内も屋外も光の回りがとても美しいのだ。風景の奥の方は書割、というカットもいくつかあるが、第一感、書割とは分からないような前景と調和した綺麗なカットで、この辺りは美術の功績も大きい。

#備忘で脇役等を記述

・教会のシーンでスチュワートと会話する隣家の主人はダブス・グリア。「大草原の小さな家」の牧師役。

・ロスの出産シーンの医者はポール・フィックスだ。ジョージ・ケネディが北軍指揮官(大佐)でワンシーンのみ登場。貫禄ある。

・南軍捕虜を乗せた機関車の運転手はストローザー・マーティン。後半、末息子が行動を共にする南軍捕虜役でジェームズ・ベストハリー・ケリー・Jr。ハリー・ケリー・Jrはほとんど台詞なし。

・ラスト近くウェインを襲う盗賊はケヴィン・ハーゲン。「大草原の小さな家」では、町医者の役だった。

(評価:★3)

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