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[コメント] 美しき母(1955/日)

雨の峠。破れた番傘をさして泥濘を行く原節子。主人公の日出夫が、いきなり猫をぶん投げる演出には驚かされる。峠はスタジオセット。あとは、家屋内を除き、ほとんどロケーション撮影か。町を見渡すカットでの、煙突からの煙は特殊効果に違いない。
ゑぎ

 原節子たちは、かつての使用人・清川玉枝の家にやっかいになる。清川の夫は多々良純で、製糸工場のカマ焚きをやっている。清川と多々良は、意地の悪い役の映画も多いが、本作では真正の善人。彼等と、原節子母子をめぐるやりとりは本作の見どころの一つだ。

 原は女工になる。日出夫は工場の社長の息子から「女工の子」と云われ、いじめられるが、「海賊クラブ」と名乗る少年達に助けられ、自分も加入する。海賊クラブのリーダーは、同年の『あすなろ物語』で中学時代の主人公を演じた鹿島信哉がやっている。また工場の社長の娘は、若き磯村みどり(当時、磯村登美恵)で、彼女は日出夫の味方になる。

 中盤、唐突に日出夫の父親(原節子の夫)として佐分利信が登場し、酷い男を楽しそうに演じるが、出番は多くない。

 本作で私が画面的に面白いと感じたのは、海賊クラブでの無人島探検のシーン(洞窟と大量のコウモリ!)や、日出夫が脱退することになる神社のシーンでの大俯瞰の挿入ぐらいだ。

 原節子に余り触れなかったが、勿論タイトルロールとして映画を背負って立っている。ただ、科白、口調が甘ったるく奇妙なディレクションだ。「お母さんが、わるかった。」という科白回しとか。あと、彼女の変顔シーンはお宝映像だろう。

(評価:★3)

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