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[コメント] 忘れられた子等(1949/日)

廊下に数字を書く児童。カメラは教室に入って、ドリーとパンニングで、子供達を見せる。本作の撮影のキャッチーな見せ場は、実はこの冒頭ぐらいで、あとは、ごく自然に被写体を切り取っている。
ゑぎ

 前作『手をつなぐ子等』との相違では、撮影者の変更がかなり大きな要素だ。また、プロットの設定として、本作は特殊学級を扱っているが、その生徒たちは皆児童劇団に所属している子供達だろう。この子等が皆、演技をつけられていると思うと複雑な心境になる。そっぽを向いて固まる所作など、それらしい演技をするだけに、余計に落ち着かない。

 前作は戦時中が舞台だったが、今回は戦後すぐの話。外車に関心のある子供なんかが登場するところは、占領期間中らしく、前作からは隔世の感がある。そして、笠智衆が校長先生役で、他にも、前作から引き続き出演している先生役もいるが、お話も人物も継続性はない。それでも、前作で若い担任の先生だった笠智衆が、本作では校長先生に昇進したような気になってしまう。主人公は、特殊学級を2年の限定で引き受けることになる、若い担任の堀雄二。本作はこの教師の成長譚なのだ。

 2回ある海水浴シーンが清涼感があっていい。1回目は堀雄二が同僚の先生と一緒に行くシーン。この時点で、堀は雲を見ても子供達のことを思っている。2回目の夏は、子供4人を連れて行く。子供に体を洗ってもらう。端的に堀の変化を表現する。

 クライマックスは、運動場のポールに登らされて降りられなくなった亀一のシーケンスだろう。はしご車が出動し大騒動になる。高低の視点転換を活かした、ダイナミックなモブシーン演出だ。ただ、私が一番感動したのは、教室で、信乃(しのぶ)という女の子が、いきなり「浜辺の歌」を美声で唄う場面だ。この子も、児童劇団で歌唱訓練を受けた子なのだろうが、精神薄弱児は、時に天才的な能力を発揮することがある、というプロットを鮮烈に現した映画的な場面だ。

(評価:★3)

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