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[コメント] 未来惑星ザルドス(1974/米)

プロローグからエピローグまで全部ジョークのような映画だと思う。勿論、笑えないジョークだが。プロローグはアーサーと名乗る男の首が浮遊する映像で、徐々にアップになる。ずっと喋っているのだが、自分がザルドスだとも云う。
ゑぎ

 アーサー−ニアル・バギーは、もう300年生きているのだと云う。死にたいのに死ねないのだと。最後に神への言及があるが、日本語字幕では「映画の神」と訳されていた(英語では「ショービジネスの神」と云っていたと思う)。これも、翻訳者のジョークのようなものか。

 ザルドスとは、空中を浮遊する、人の頭部を模した巨大なストーンヘッドのことだ。乗馬した撲滅戦士−エクスタミネーターズたちが集まり、ザルドスを崇める場面では、口の部分から、銃器と弾丸が降って来る。また、ザルドスから声が聞こえるが、私はジェームズ・アール・ジョーンズの声かと思った。撲滅戦士のリーダ格が主人公のゼッド−ショーン・コネリーだ。撲滅戦士は、獣人−ブルータルズと呼ばれる家畜(というか農民か)を管理しているが、殺戮したり、レイプしたりするのも仕事のようだ。しかし、ゼッド−コネリーは、一人ザルドス内部に侵入し、ザルドスを作ったエターナルズたちの理想郷−ボルテックスへ運ばれるのだ。プロットの大部分は、このボルテックスが舞台となる。

 プロローグで登場したアーサーもエターナルズで、確かに自分がザルドスだと云っていた通り、ザルドス内部でゼッドはアーサーに会う。ザルドスの声はアーサーだったということだ。この場面でゼッドに撃たれたアーサーが空中に浮かんでから、ゆっくり落下する見せ方は面白いと思った。

 ボルテックスに着いたゼッドは、エターナルズに捕らえられ、試しに3週間飼育されることになる。エターナルズは、基本は20代ぐらいのルックスで歳をとらないのだが、彼らにもいくつかのグループがあり、年老いた男女の集団や非常に無気力な集団もいる。年老いたエターナルズがいるのは、罪を犯した者の懲罰が加齢だからだ。この罰が加齢というのは面白いアイデアじゃないか。最初にゼッドを管理する担当になったフレッド−ジョン・アルダートンは、皆と異なる考えを表明したために、加齢の懲罰を与えられ、顔の左側が老人メイクになる、なんてところもジョークのようだ。

 他のエターナルズの中では、ゼッドを庇護する側のメイ−サラ・ケステルマンとアヴァロー−サリー・アン・ニュートン、そして、ことごとく彼を排除しようと主張するコンスエラ−シャーロット・ランプリングという3人の女優が目立つ役割りだ。これらの女優にはいずれにも、エロティックな見せ場がある(特にアヴァローは登場からずっと半裸)。しかし、ランプリングが出てくると、画面の空気や温度まで変わるように感じる。それは、決して、彼女の現在までのキャリアを知っていることから来る認知バイアス(ハロー効果)ではないと思う。

 というワケで、基本設定やキャラクタリゼーションは充分に面白く、よくこんな世界を構築し画面化したなぁとジョン・ブアマンの剛腕ぶりには感心してしまうのだが、いかんせん、予算的な面が大きいのだろうが、片田舎の小さな村が理想郷の全体だし、エターナルズのモブシーンも規模が小さ過ぎ、もっと大規模な見せ方が出来ていれば、と残念に思う。ただ、それでも、撲滅戦士たち−エクスタミネーターズが丘に出現する場面など、ロケーションを最大限に活かした画面作りには、見るべきものがある。また、劇伴として、いく度となく使われるベートーベンの第7番アレグレットは本作にとてもマッチしている。

(評価:★3)

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