[コメント] 嵐を呼ぶ楽団(1960/日)
宝田は臨時雇いのピアニストだが、雪村のパフォーマンスにインスピレーションを受け、思わず即興でソロパートを弾いてしまう。店員の世志凡太らが怒る。楽屋での宝田と雪村とのやり取り。偉そうなことはバンマスになってから、とピシャリと云う雪村。
本作は、バンドマスターとして成長していく宝田と、歌手として活躍する雪村を描いた映画。しかし、特に宝田の周囲のバンドマンなど多くの人物が登場するので、群像劇の側面もある、井上梅次らしい良く出来たミュージカル映画だ。
宝田はまずは山茶花究がマネージャーのバンドに参加し、トランぺッターの高島忠夫と出会う。別府へ向かう列車の中、車両連結部で宝田が作曲した曲を吹く高島のシーンは、バックの夕景が美しい、全編でもとびっきり印象に残るショットになっている(だからだろう、終盤でもフラッシュバックされる)。
仔細は割愛するが、宝田と高島は、別府の旅館で山茶花に夜逃げされ、自分たちのバンドを結成すべく、メンバーを集めるクダリになる。こゝもなかなか楽しいのだが、詳細は省き、メンバーを記載すると、ギターは水原弘、ベースの神戸一郎、ドラムが柳沢真一、サックスで江原達怡、そしてボーカルは朝丘雪路だ。
もう梗概もサクッと省略して、特筆すべきと思う部分を記述すると、宝田のバンドが売れ始めた頃作られるのが「午前0時のジャズ」という曲で、これがなかなかいいのだ。この曲はラストでも使われる本作の中でも重要な曲になる。あと、雪村も参加しての興行が「ジャズの歴史」という、ラグタイムから当時の最新のジャズシーンまでを舞台でたどるショウなのだが、スケールは小さいが、とても凝っている造型だと思った。こういうことを日本映画がやっているとは思ってもみなかったのだ。
また、本作のミュージカルシーンは、基本、ミュージシャンたちの練習や舞台を映している、という体(てい)ではあるが、一か所だけ、純然たるミュージカルシーンがある。それが、別府の海辺で高島と朝丘が唄う場面。唄う二人の背景が、フィルターのように緑や黄や赤に変化するシーンで、特別な処理を行っている。こゝも突出感があり過ぎるけれど、面白い試みだと思う。
#備忘でその他の配役等を記述します。
・宝田の家は大阪にあり、母親は水戸光子。二人とも関西弁は喋らない。
・雪村の姉でマネージャーの環三千世。
・別府の旅館の主人は柳家金語楼。顔芸で笑いを取る。旅館の番頭は森川信で、副番頭みたいな位置づけで柳沢は登場する。森川も柳沢もジャズが好き。森川はベニー・グッドマンをドラマーと云う。柳沢はシェリー・マンやマイルス・デイヴィスを知っている。
・宝田のバンドの名前はブルースター。父親がバンマスだったバンドと同じ名前。父親は写真のみで登場するが、上原謙かと思った。
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