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[コメント] 西部に賭ける女(1960/米)

ダドリー・ニコルズが脚本に参加しているとはいえ、キューカー唯一の西部劇で、ソフィア・ローレンカルロ・ポンティ作品だし、見る前はとんでもない代物ではないかと危惧する気持ちもあったのだが、なんのなんのキューカーの演出の特質が西部劇にマッチした見応え充分の映画だ。まず、全てのカットで殆ど構図が完璧と言ってよい。
ゑぎ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 荒野を馬車が行くシーンの空、その曇天の禍々しい美しさは特筆モノ。複数台カメラで撮影されたアクション繋ぎもいつものごとく抜群の効果を上げているし、登場人物の豊かな表情を引き出す術もキューカーらしさに溢れている。

 主演の二人、ソフィア・ローレンとアンソニー・クインへのディレクションは勿論素晴らしいが、スティーヴ・フォレストのピカレスクな魅力がいい。彼の登場カットのなんという強い画面。また、かつての名子役マーガレット・オブライエンの扱い方も面白い。二十歳になっても子役のイメージを押し付けられている女優という役どころで彼女の実人生にダブらせている。

 そして何と云ってもインディアンの斥候が唐突に出現するシーンの異様な演出、得体の知れない不気味さの表現は出色だろう。

 ただし、ラストは甘い。普通の西部劇であればラストでアンソニー・クインとスティーヴ・フォレストの決闘シーンを用意する展開へ無理やり持っていくところだが、キューカーはあくまでもメロドラマとして決着をつける。西部劇ファンにとっては物足りないラストだが、それもキューカーらしさだ。傑作と云い切ろう。

(評価:★4)

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