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[コメント] 生まれかわった為五郎(1972/日)

夜の列車内のカットから始まるが、上野駅の風景でクレジットが入る。この後、上野駅構内(特に男子トイレ内)が何度か出て来て、お話の起点になる。妻子を捨てた財津一郎が、タイトルロールの為五郎、ハナ肇と出会うのも上野駅のトイレ内だ。
ゑぎ

 まず、前半のハイライトは、ホステス(というかアルサロ嬢か)の緑魔子の部屋で、財津が一夜を過ごす場面だろう。こゝは俯瞰の長回し。緑魔子はコンニャクの食べ過ぎで鳥目だと云う。猿股のようなズボンを履き、財津の足側から布団に入る。この寝間での会話シーン、セックスのことを「恋愛」と云う、緑魔子のイノセンスが炸裂する。

 中盤、舞台は鹿島の工場地帯に移り、緑魔子の家族が登場する。父親は殿山泰司、母親が都家かつ江、弟は高橋長英、そしてお祖母さんが北林谷栄だ。北林による、夜の寝間での思い出話の場面も素晴らしい。かつて、浜に打ち上げられた「死にウオ」のようになった男を温めた話。この北林による回想は、終盤で、浜辺に打ち上げられたハナ肇を、裸になって温める緑魔子で再現されるのだ。彼女の裸体は、ハナ肇が、浜辺にいる財津と緑魔子を妄想するシーンでも見ることができる。

 プロットは、ハナ肇による、三木のり平の組への殴り込みへ進む。ハナ肇が、拳銃を持って、三木をサウナに追い詰める場面がクライマックスと云ってよいと思うが、上で緑魔子を中心に記述した通り、映画全体を通じて、やっぱり彼女が主人公だと思えるぐらい、存在感がある。エンディング、エピローグでも、ハナ肇は、財津に彼女のことを語り、「恋愛はへそから下でやるもんだ」と云う。ラストは、財津が締めるのかと思いきや、緑魔子がチンドン屋になって登場するのだ。詳述は避けるが、これが隻眼のメイクなのである。

(評価:★3)

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