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[コメント] 牝犬(1951/日)

あゝ、素晴らしい!京マチ子!対して、志村喬は、中盤までは真面目過ぎる演技でイマイチ面白くないと思っていたが、ラスト近くになって鬼気迫る演技を見せる。やっぱり凄い。『嘆きの天使』の見事な翻案だ。
ゑぎ

 ほゞすべてのカットがローアングル。木村恵吾もローアングルの作家だ。屋内の横移動や前進移動といったドリーショットも見せるが、基本は小津ばりの犬の目線ショットなのだ。また、京マチ子の登場は脚カットで、楽屋の前の一段高いところで脚を組んで登場する。そもそも題材からして、ダンサーの衣装や水着など、女性の肌の露出の多い映画だが、志村が京マチ子の汗を拭いてやるシーンでは、胸のあたりを執拗に拭くけれど、同じように脚への偏愛もちゃんと描いている。本作も充分に脚フェチ映画だ。

 中盤、プロットをギアシフトする際、志村の家の前を映して、落葉〜雪、と時間を簡潔に経過させ、続いて「次の年の夏、とある町」へ時空を大胆にジャンプさせる繋ぎには、唖然とする。さらに、このカットで画面奥に機関車を走らせる。そして中盤以降の舞台となるキャバレーの内部が描かれるが、女たちの部屋では汽車が通ると蒸気が窓から入ってくるという凝りようだ。このあたりの木村恵吾の映画センスも素晴らしい。

#備忘で配役等を記します。

 志村喬の家族。病弱な夫人は北林谷栄。バレエダンサーに憧れる娘、久我美子。志村は保険会社の経理部長。部下の課長に藤原釜足。社長は見明凡太朗。京マチ子のヤクザな兄貴に加東大介。キャバレーの女給で目立つのは、利根はる恵。ラスト近く、京マチ子に東京へ行くように云う。キャバレーの楽団。トランペットは若き高品格。京マチ子とサシで花札をする。新人のサックス奏者として根上淳。最後の演奏は「別れのブルース」だ。

(評価:★4)

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