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[コメント] わたしの願い(1953/米)

サークお得意のスモールタウンものだが、主人公がバーバラ・スタンウィックなので、ほのかに犯罪映画の匂いがする。
ゑぎ

 スタンウィックは10年前に家族を捨てて、女優になると云って都会へ家出した女。家族とは夫と子供3人(だから、酷いお母さん)。実は家族だけでなく、家出する際、不倫相手の男とも決別していたのだ。そんなスタンウィックが、娘(次女)からの手紙を受け取り、10年ぶりに戻って来る、というお話。女優志望の次女は、母親のことをNYの有名女優と思って憧れているが、現実は、場末の劇場で、ボードビルショーのような舞台に立つ、鳴かず飛ばずの女優なのだ。

 スタンウィックの夫はリチャード・カールソン、長女はマーシャ・ハンダーソンで、次女がローリー・ネルソンだ。その下に男の子もいる。まず、スタンウィックが田舎町(ローズデイルという町)の家に帰宅する場面が目を引く。玄関の横を通って、庭の方へ回り、大きなガラス窓から家族の様子をうかがうのだが、そのまゝ、皆に見つかって、庭側のガラスドアからリビングに入るのだ。この後、玄関ドアからの人の出入りは、ずっと映らなかったと思うのだが、ラストシーンは、玄関前から撮った、屋内に入る場面なので、この人物の動かし方には、サークのこだわり、何かの寓意があるのだろう。

 あと、次女が主演をつとめる高校の演劇上演シーンから、その夜のパーティの場面あたりまでのモブシーンやダンスシーンの見せ方は実に洗練されたもので、流石はサーク、と唸らされる。また、スタンウィックと長女とそのフィアンセの3人で、外乗(ホーストレッキング)する場面もハッとさせられる部分だ。それまで、ずっと屋内シーンが続いていたのに、いきなり自然の風景の中を、かなり速い駈歩(かけあし)で、しかも女性は横乗りなので、ヒヤヒヤさせられしまうのだ。それと、唐突な帰宅に戸惑っていた夫のカールソンも、スタンウィック自身も、徐々に気持ちが戻って来た後、二人が抱擁するカットに続いて、翌朝、それぞれが朝食に降りてくる場面があるが、何も語られないが、前夜の事の次第を表しているのだろう。こういう省略と暗示の演出も常套だが、上手いものだと思 う。

 ただし、スタンウィックが、かつての浮気相手−ライル・ベティカーに呼び出された後の顛末は、ちょっと性急過ぎる演出、展開だと思う。逢引きの場所に、息子も居合わせる、というのもそうだが、何よりも、発砲事件に対する医師の対応が、納得できないものだ。そういう意味では、ラストシーンは不穏なムードのまゝ終わってしまった、という感覚を持つ。私から見ると、やっぱりスタンウィックは、犯罪映画の「運命の女」のパターンを演じていると云えると思う。

(評価:★3)

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