ただし、ズーミングは、例えば『ボーン・スプレマシー』程、これ見よがしではなく、慎ましく用いられているのでイヤラシくはない。ま、そんな細部以上に、全体にプロットの落ち着きの悪い、梗概レベルの現実らしさを気にする観客には嫌われそうな出来ではある。

　なのだがそうは云っても、矢張り銃撃戦の演出に関しては見応え十分だ。下水道とそれを抜けた波止場のコンテナ置き場の場面にしても、ヒロインのタン・ウェイと車中の兄ワン・リーホンとの別れのシーンに続く道路での場面にしても、実に驚きの詰まった演出なのだ。特に、後者の道路での銃撃戦から始まる怒涛の展開が本作の肝だろう。これらのシーンにおける敵役、リッチー・コスターに比べて、ラスボスがイマイチ迫力無いのは残念な点。しかし、エンディングまで、ヒリヒリした緊張感は継続する。