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[コメント] 他人の家(1949/米)

本作も最強のジョゼフ・L・マンキーウィッツだ。そしてこれも、肖像画とその肖像の対象である、今は亡き人の「呪い」を描いた映画だ。そういう意味で、本作の最も象徴的な、力の入った演出は、主人公リチャード・コンテが回想に入る部分だろう。
ゑぎ

 コンテの父親である、エドワード・G・ロビンソンの邸で、その肖像画のカットから、カメラは階段を上階へ移動し、時間を遡って、在りし日のロビンソンに繋ぐ、流麗な演出だ。しかし、それにも増して、既に冒頭の、リチャード・コンテが露天商の並ぶ舗道を歩いて来る俯瞰の移動カット、これが、尋常ではない荒々しいカットで、ドキリとする。これは、はっきりした感情の表現で、コンテの荒ぶった感情の定着したカットなのだ。これらを見ても、マンキーウィッツという人は、大した「映画監督」だという認識を強くする。

 また、中盤に何度か登場する、酒場の雰囲気も抜群にいい。ピアノの弾き語りをする黒人女性(ドロレス・パーカーというエリントン楽団にいた歌手らしい。在団期間は1947年9月から1948年春とのこと)が情感を盛り上げる。あるいは、銀行に会計監査が入った結果、業務停止となった際、預金者が銀行前に集まってくる、このモブシーンも見事だ。

 そして、エンディングの展開、締め方も素晴らしい。恩讐を超えて、コンテとスーザン・ヘイワードが結ばれてエンドかと思いきや、ルーサー・アドラー達兄弟が現れ、強烈な見せ場、邸のバルコニーでの、高低を十二分に活かした演出が展開する。しかも、このラストで兄弟達が皆、亡き父ロビンソンの呪縛から解放されるという、このエンディングには、とても満足感があるし、ラストカットもあゝ何てカッコいいのだろう!

#配役等を備忘で記す。

・ルーサー・アドラーが兄、弟にエフレム・ジンバリストJr.ポール・ヴァレンタイン。母親は『マーティ』のお母さんをやったエスター・ミンチオッティ

・コンテの婚約者の役で若干16歳のデブラ・パジェット。その母親は大女ホープ・エマーソンだ。コンテがエマーソンに「また大きくなったんじゃないか」と云う科白がある。コンテとパジェットとエマーソンは前年の『都会の叫び』(ロバート・シオドマク,1948)でも共演しており、この科白はある意味楽屋オチなのかもしれない。

・ちなみに、パジェットは前年の『都会の叫び』で、15歳で映画デビュー。本作の翌年の『折れた矢』(デルマー・デイヴズ,1950)では、17歳でジェームズ・スチュワートの妻の役を演じている。コンテとの年齢差は23歳差。スチュワートとは25歳差。

(評価:★5)

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