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[コメント] ヨーヨー(1965/仏)

可愛いピエロの絵の各パーツが動く画面にクレジット。クレジット開けは大邸宅の外観ショットだ。1925年。邸内の壁には肖像画がいくつかあるが、皆、ピエール・エテックスの顔をしている。
ゑぎ

 この最初のパートはサイレント映画。音は、特定の効果音と劇伴のみ付加されているが、科白は一切なし。ドア開閉の際の効果音が律儀に入る。ギーっという音が耳に障る。邸の主人(富豪)−エテックスと召使たちや犬を描いた部分では、バンドの演奏が始まり、女性ダンサーたちが踊るシーケンスが気に入った。ジャズエイジのイメージ。こゝで、エテックスの靴のスパッツのボタンをゆっくりと外す女性の手が映り、靴紐、靴、靴下を焦らしながら脱がす場面がある。それを見て興奮する他の女性たち。こゝ面白い。ワタクシ的には、序盤で一番ウケた。

 主人公のヨーヨーは、このサイレントパートの、サーカスがやってきたシーケンスで、子供のピエロとして登場する。この子が邸宅の中をウロウロする場面がとても可愛い。サーカスの観客は邸の主人(富豪)ただ一人で、欠伸をしながら見ているが、馬の曲乗りで馬の前肢を折り曲げさせ、挨拶のように見せる女性騎手が登場し、お互いに目が合って、ハッとするのだ。この女性はヨーヨーの母親で、父親は邸の主人(富豪)だったと分かる展開だ。

 時間が飛んで1929年、大恐慌時代になると、トーキーも到来しており、本作にも科白(声)が付く。没落した富豪は、ヨーヨーとその母親との3人で、自動車とトレイラーハウスに乗り旅に出る。こゝからの巡業シーケンスが楽しい。幸福な時間。私が一番楽しかったのは、この中盤だ。コメディ演出も空間を上手く見せる。走る自動車を使った演出では、自動車とトレーラー間の煙草の受け渡しだとか、ヨーヨーに運転させて、お父さん(元富豪)は、屋根上を伝ってトレーラーに移動し、お母さんにキスをするシーンだとか。その後、トレーラーの上のお父さんが木の枝に引っ掛かる見せ方も上手いものだ。

 またも時間が飛び、大人になったヨーヨーはエテックスにリレーキャストし、一人でサーカスに参加しているが、ピエロとして人気者になる。1939年の大戦勃発により従軍するが、戦争場面は割愛され、テレビの普及とともに、テレビでも人気が出る。サーカスの場面でのヨーヨーからカメラが引く(後退移動する)と、テレビ画面だった、というような凝った演出もある。後半、サーカスのメンバで、ヨーヨーに好意を寄せているイゾリーナという女性が出て来るが、これをクローディーヌ・オージェがやっており、彼女とヨーヨーの関係が恋人に発展するかどうかは、プロット展開のポイントだろう。終盤、ヨーヨーのお父さんとお母さんが再登場するかどうか、という点も同様だ。サーカスを扱った映画らしく、何とも云えない余韻を残して終わるのだが、しかし同時に、ラストカットのシュールな絵面も特筆すべきだろう。

#ヨーヨーとお父さんが町の広場で、8・1/2(8時半)と書かれた立て看板を出そうとする場面、既に「ザンパノとジェルソミーナ」の看板がある。

(評価:★3)

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