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[コメント] 泣き濡れた春の女よ(1933/日)

港に停泊している船のカット。乗船する男たち。デッキに上官。続いて女たちが船に入って行く。船室に集合した男たち。点呼。以降何度も点呼のシーンが繰り返される。これも、清水宏らしい、掛け声のモチーフと云えるだろう。
ゑぎ

 デッキに女たち。その中に大日方伝がいる。岡田嘉子からタバコをもらうが、ありがとうぐらい云わないの?と、問われ、ヘソを曲げてタバコを返す。けだるいが、雰囲気のある良い出だしだ。

 北海道から津軽に渡った炭坑夫と炭鉱町の酒場女のお話。馬橇で行く場面の大俯瞰に驚く。あるいは酒場の美術装置がいい。大きな窓。カウンターとその奥に並べられた酒瓶。酒樽の椅子。二階へ上がる階段。二階から屋根裏部屋への階段。表のポーチ。岡田が二階の踊り場を歩くカットは後退移動する。他にも屋内のドリー撮影が多数ある。

 岡田嘉子と千早晶子が大日方伝を取り合うようになる。その様子を相撲に喩える村瀬幸子(若い!)。大日方と小倉繁(ちゅうこう)の関係。大日方と、岡田、千早、大山健二(ぐず安)の四角関係。大日方と大山とのナイフを使った対決シーンは、垣根の向こうで(垣根で隠して)演出される。見せない演出は、ラスト近く、屋根裏部屋の大日方と千早が、ずっとシルエットで処理され、そのまま最後まで映らない、という演出もそう。このラストは実にカッコいい。

(評価:★4)

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