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[コメント] 適齢三人娘(1951/日)

雑誌記者の若原雅夫をめぐる、適齢の女性三人の話。これもかなり面白いラブコメディだ。タイトルの三人とは、主人公で元伯爵令嬢の津島恵子とその姉の幾野道子、そして元々若原に気のある喫茶店のレジ係(?)−小林トシ子
ゑぎ

 お話は、津島と幾野の家に手紙が配達されるところから始まる。二人の母親は吉川満子で手紙の内容は、幾野の婚約者からの、一方的な婚約解消の通告だった。幾野は大人しいキャラだが、津島は勝気で、怒った彼女は一人、姉の婚約者のアパートへ乗り込む。ところが、そこにいたのは見知らぬ男で、これが若原だった、という出会い(姉の婚約者は用意周到転居していたということ)。しかし、このシーンが楽しい。若原が、煙草取ってくださいから始まって、服やネクタイの用意や、パンを切ってください、などと頼むのを、嫌々ながらも、図々しさに呆れて(ちょっと笑いながら)やってあげる津島、というシーンだ。

 若原は「スマイル」という雑誌の記者で、相棒のカメラマンは大坂志郎。今度、斜陽族の特集を掲載するということで、元子爵の増田順二を取材するが、これがイヤなヤツ。そこにまたも津島が乗り込んで来る、というのが再会の場面。増田が姉の婚約者だったということだ。増田をやり込めた津島と若原らが、お茶でも、と云って入った喫茶店のレジ係が小林という案配で、小林は先から若原のことが好きだが、大坂は小林が好き、という関係だ。続いて、津島が働いている銀座の洋装店の場面になるが、こゝに若原と大坂が取材に来て、またもや邂逅という展開。こちらに元伯爵令嬢がおられると聞いたのですが。この後、津島が正体を明かす演出も洒落ていて、とてもいい。

 そして日にちを置いて、大森のオジサンと呼ばれる十朱久雄が津島へ縁談話を持って来る。これが、まずは、上野の美術館(東京都美術館)の前で、当人同士だけで外見を確認することから始める、という変則的な見合い話で、津島は姉の幾野に身代わりで行ってもらう。相手は元々細川俊夫だったが、彼は友人の若原を代理にする、というワケで、幾野と若原がお見合いをすることになるのだ。帰って来た幾野は、若原のことを「日本のシャルル・ボワイエって感じ」と云う。

 この後も、幾野と若原が数寄屋橋で偶然再会するなど、川島らしい「世間は狭い」攻撃があり、幾野は若原と結婚したいと考えるようになる。津島は姉も自分と同じ人を好きになっているとは思いもよらないワケだが、この状況で、終盤まで話をひっぱるのかと思っていたら、意外と早く津島と若原は真相を知ることになる、というのが逆にツイストになっている。二人がお互いに困ったと云う、ということは、二人は相思相愛であるということなのだ。愛の告白など全くしないで、恋人同士のようになる。このあたりの津島のニコニコしながらの演技がとてもいい。

 さて、終盤は小林がちょっとした悪役で、津島と若原の間に割って入って一波乱起こす、というように、プロットをかき混ぜる。ラストは鬼怒川温泉の場面。こゝは、旅館の部屋のバルコニーが展望台のようだし、館内の階段のショット含めて高低の見せ方がいい。また、大坂が真剣に小林を叱る、という良い見せ場が与えられているのも嬉しい場面だ。全体にちょっと無理やり取ってつけたような展開も多いが、全てが丸く収まる収束が心地いい。

#備忘でその他の配役等を記述します。幾野の元婚約者−増田が乗り換えた女性は西條鮎子。新宿の親分の娘と云う。増田の秘書は坂本武。雑誌スマイルの編集長(?)は小林十九二

(評価:★3)

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