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[コメント] 阿片戦争(1942/日)

冒頭、英国の軍艦が映り、ユニオンジャックに「海賊」と大書されるのには笑ってしまった。まずは、広東の城壁と門の美術が目を瞠る。
ゑぎ

 カメラワークでは、モブシーン等(例えば、高峰秀子の乗った牛車が疾走するのを、原節子が見とめる場面等)での、マキノらしい、スピーディなドリー横移動なんかがダイナミックで見事なのだが、本作には、重要な箇所で2回ズーミングが行われており、書き留めておきたい。一つ目は、原と高峰の姉妹が離れ離れになるモブシーン。原は、倒れた阿片中毒者の老人・丸山定夫のために水を汲みに行き、椀を持って高峰の所へ戻ろうとするのだが、こゝでズームアップがある。二つ目は、ラスト近く、英国軍艦からの砲撃カットでもワンカット、ズームで寄る。軍艦はミニチュアか。爆発、街の炎上の造型は円谷らしい。ズーミングも円谷のディレクション かもしれない。

 さて、阿片窟での、原と高峰の揃っての登場は矢張り鮮烈です。二人ともにチャイナドレス姿。花の髪飾りをしている。けっこうすぐに離別するので、二人のツーショットが少ないのは残念。高峰には小杉義男の酒場での歌唱シーンがあり、原は、園遊会のシーンで唄うのだが、原は吹き替えか?こゝはミュージカル場面に繋ぐ豪華なシーンでもある。

 あと、ラストの砲撃シーケンスの中で、英国軍人を演じる鈴木伝明が哄笑するのだが、これが5カットぐらいの執拗なポン寄りなのだ。これは、敵意の増幅が狙いなのだろう。さらに、エンディングは林即徐役の市川猿之助が正面カメラ目線で英国の非道を大演説する。この辺りは、冒頭の「海賊」から一貫している。ただし、鈴木伝明の兄の役で、広東における英国側のリーダを演じる、青山杉作の演技の強さ、存在感(メーキャップ!)も、特記すべきだろう。

(評価:★3)

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