[コメント] M(1951/米)
話の大筋は、フリッツ・ラング版とほとんど同じのリメイク作品だが、もちろん、細部は結構異なるし、本作の良さもある。主人公の造型はラング版のピーター・ローレの方が爬虫類的な変質者の怖さが強調されていたように思うが、本作のデヴィッド・ウェインはもっと何かに悩んでいる感が強い。変態的な様子を表すのは、後半の雑居ビルのマネキン会社に閉じ込められたシーンぐらいじゃなかろうか。連れ込んだ女の子を放っておいて、必死にドアを開けようとするウェイン。手から血がふき出す。こゝは異常な感じが良く出ている。
また、ギャングの弁護士役のルーサー・アドラーの存在は、本作のストロング・ポイントだろう。終盤の犯罪者たちによる、疑似裁判の場面では、アドラーの独壇場になる。アル中で、一言喋るたびに酒を欲しがるアドラー。デヴィッド・ウェイン以上に偏執狂に見えて来るのだ。ギャングの幹部の中には、レイモンド・バーやノーマン・ロイドがいるが、イマイチ活躍しないのは残念。
#備忘で配役等について記述します。
・警察署長はロイ・エンジェル。警部補がハワード・ダ・シルヴァで、その部下の刑事はスティーヴ・ブロディ。ブロディもイマイチ活躍しない。冒頭、署長と話をしている市長はジム・バッカス(『理由なき反抗』のジェームズ・ディーンのお父さん)。メチャ偉そうな演技。
・ギャングのボスは、マーティン・ガベル。カポネを彷彿。ギャングの幹部では、他にウォルター・バークがいる。
・ハイウェイのトンネルの隣りにある、ケーブルカー停車場のロケーションは、ジョセフ・H・ルイスの『脱獄者の叫び』(1953)でも使われている場所だ。
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