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[コメント] 100万人の娘たち(1963/日)

海岸。独特の波状の棚のような地形だ。堀切峠という看板。日南海岸を行くバスのシーン。バスの中では、岩下志麻がガイドだ。
ゑぎ

 岩下が車窓から空を見る。空を飛ぶ飛行機が小さく映る。このショットはいいショット。この映画、宮崎県の観光映画なのだが、時折り、ハッと驚く良いショットが出てくる。

 設定を簡単に記すと、主人公は岩下志麻で、その姉が小畑絹子。共にバスガイドだ。岩下は、観光ホテルに勤める吉田輝雄と姉との仲を取り持とうとするが、いざ、二人がくっついてしまうと、自分も吉田のことを好きだったことに気づき、葛藤する、というプロットになる。冒頭と同じ海岸での吉田と岩下のシーンで、姉に対する吉田の気持ちを聞き、急に思い詰めた表情の岩下のショットが繋がれるのは、漫画みたいな唐突さで、ちょっと滑稽に思う。と云うワケで、始まって20分ぐらいで、吉田は小畑にプロポーズし、あっという間に結婚式は神前で、神主は叔父さんの笠智衆、という話の運びを見せるのだ。

 岩下が結婚後の姉の新居を訪ねるシーン。まず応対するのは乙羽信子で、吉田らは乙羽の家に下宿をしているということなのだろう。風呂場でイチャイチャする吉田と小畑。それを見て不快に思う岩下の図、という場面だが、風呂場のシーンは大事だと思う。この後の展開、小畑の手術(乳房の切除)前後の感情に効いてくるシーンだろう。また、別のシーンでは、小畑が出したコーラに蛾が入っている、というあからさまに悪い予感を象徴するイメージを繰り出したりするのだが、これはちょっとやり過ぎかとも思う。

 では、最初に書いた良いショットの例をくつかあげておこう。冒頭は全国バスガイドコンクールで優勝した小畑の凱旋パレードの場面だが、地元の協力を得て沢山の観衆を集めたのだろう、なかなかのモブシーンになっている。特に大きな橋を行進するショットには驚かされる。また、岩下と吉田の部下の津川雅彦が、ベンチで会話をしていると、4人の女子(岩下のバスガイド仲間、五月女マリら)が現れて、冷やかすシーンがあるのだが、こゝのシネスコいっぱい使ったフルショットの横移動には感嘆した。あるいは、岩下と先輩の中村雅子が、東京のゼミナールに参加する場面での東京湾見学シーン。船上の女性たちのショットが端正な構図だ。あと、小畑の悪夢か、フェニックス並木の道を、前に吉田と岩下が歩き、小畑は後ろを追いかけるが、全然二人に追いつかないというイメージシーンがあるが、この夜間ロケ撮影もよく撮れていると思った。

 タイトルの「100万人の娘たち」は、日本全国の働く女性のことを指していると思われる。本作のラストは、岩下が東京で見聞を広め、意識が高められたことにより、自分の人生を力強く選択していく、というかたちの収束を見せるのだが、少々取ってつけたような感覚が残る。本作は矢張り、宮崎の景勝地に加え、22歳の岩下志麻の美しさが、一番の見どころだろう。あと、終盤に笠智衆のとぼけた演技が炸裂するのもいい。

#備忘でその他の配役等を記述します。

・独特の地形の海岸は、青島の「鬼の洗濯板」という場所。

・序盤で小畑と吉田を取り合うライバルのガイドに牧紀子。この人も綺麗。ガイドたちの上司(管理職)は柳谷寛。寮母は田中筆子

・吉田がバーで接待をする相手は穂積隆信

・医師で北龍二葵京子が看護婦。

・岩下が東京湾岸で労働者になった牧紀子と再会する場面では、内藤武敏が登場する。

(評価:★3)

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