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[コメント] クレイグの妻(1936/米)

傑作。ファーストカットからいい。「メイジー!」と叫ぶジェーン・ダーウェルのバストショットから始まる。舞台はほとんど、ジョン・ボールズロザリンド・ラッセルが夫婦のクレイグ家の邸の中。
ゑぎ

 ダーウェルはベテランの女中で、メイジーは新米の女中の名前だ。メイジーが、マントルピースの上の壺を触っているので、呼びかけたシーンが冒頭だが、奥様に見つかったら、たいへんなことになると云うのだ(少し動かしただけで、叱られる、ということだ)。本作は、奥様−ラッセルのちょっと極端な自分勝手な性向の描き方が、ラストにまで至るぶっ飛んだ面白さ、というか傑出した演出のポイントになっている。演者側から云えば、本作はラッセルの代表作と云うべきだろう。

 また、プロットのツイスト感も、実に憎いと感じる部分がある。まず、序盤でボールズの友人として、ちょっと神経衰弱ぎみのトーマス・ミッチェルが出て来るのだが、この人がずっと絡むかと思っていると、ワンシーンのみの出番なのだ。さらに、中盤は、ある殺人事件がクレイグ家を揺るがすか、と思わせるのだが、警察の訪問とインタビュー、ラッセルの嘘の応答による緊迫感の昂進まで描いておいて、まったく反故にしてしまうのだ。しかし、この事件へのラッセルの対応が、ボールズとの関係を決定的に変化させる、というかたちで機能しているので、逆に、懐深い作劇だと感嘆してしまうのだ。

 さて、本作が傑作だと感じられる一番の要因は、やっぱりラスト数分の、ラッセルに対する演出だろう。目に涙をためたまゝ、邸内の各部屋を見回す、その時間の演出。なんという厳しさ。ただし、最後の最後に、格言めいた字幕が入るのは、ちょっと野暮ったくて、これがなければもっと良かったのに、と思ってしまった。あと、ラスト数分のラッセルの各ショットも凄いが、全編通じて最も良いと思った(興奮した)ショットは、マントルピースの上の壺が、叩き割られる際の2カットだ。壺を床に叩きつける動作を、ウェストショットから、フルショットに繋ぐカッティング(アクション繋ぎ)にしびれる。

(評価:★4)

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