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[コメント] 囁きのジョー(1967/日)

斎藤耕一の長編監督デビュー作。冒頭から中盤ぐらいまでは、若々しく、才気走った演出がとても面白かった。撮影も(音楽も)斎藤耕一が兼務しており、当時の流行もあってズームを頻繁に使うが、ほとんど品のある使い方だったのも、好感が持てる。
ゑぎ

 タイトル・ロールのジョーは中山仁が演じる。彼の恋人はモデルの麻生れい子。冒頭のこの二人がいちゃつくシーンで、まずは麻生の肢体に惚れ惚れする。スリップ姿などで常に胸の谷間が見えており、これには目が釘付けになるではないか。また、二人が常連の六本木のメンバーズクラブのシーン、こゝの場面が悉く濃密な造形で、これは特筆すべきだろう。世良譲のピアノと渡辺貞夫のフルート演奏が見られる、というのもポイント高いが、スキャット歌手として、笠井紀美子が登場し、歌も聴かせるし、しっかり演技するのだ。中山から一緒に寝ようか、と云われ、軽く、いなしたりする。中山は、恋人の麻生を、若い金持ちの金内吉男(ロータス・エランに乗る御曹司)にあてがったり、クラブに初めて来た客の冨士真奈美と一夜を共にしたりする、かなり酷い男だが、しかし憎めないキャラクターに描かれている。

 中山が六本木から朝帰りする場面。途中でマラソンランナー3人とそのコーチ(松崎真?)と一緒に走り、神宮外苑へ。銀杏並木を越え、絵画館で信欣三のルンペンと出会い、赤坂のホテルへと至るのだが、このあたりの自由で伸びやかな演出がいい。また、麻生のモデルの仕事を繋ぐところも面白いし、彼女のアパートの外観カットも、フォトジェニックな良い画面だ。あと、冨士真奈美が出ているシーンは、全部いいと思った。特に、国立競技場の中山と富士の夫−西村晃の対決場面が白眉だと思う。叫ぶ声がコダマになって反響する演出。富士の豹変ぶりにも笑ってしまった。

 国立競技場のシーン以降、中山と信欣三がラストまで一緒にいるのだが、こゝからが、イマイチ面白くないのだ。前半以上に、思いつきの演出を繋げたみたいに見える。麻生の出番が減ってしまうのも寂しい。終盤で良いと思ったのは、凄い土砂降りの中、麻生と金内が、エンコした自動車を押す場面ぐらいだ。女優が出ていないシーンは、イマイチという感覚を持つ。

(評価:★3)

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