[コメント] 空、見たか?(1972/日)
舞台は概ね倉敷?〜大阪〜京都〜倉敷と推移する。最初に書いておくと、タイトルを現わすようなエピソードや科白は無い。ただし、カメラが空に向けてティルトアップするショットが一回だけある。
冒頭はハンドボール部の練習風景。吉澤はキーパーだ。高校時代は、吉澤が付き合っている陽子−宮崎ふみえとの、若さにまかせた交渉シーンと、しかし吉澤が秘かに想っている優等生の光子−吉岡ゆりへのアタック等が描かれる。吉澤の父親で斎藤正治、また陽子の父親で小松方正が出て来る。
大阪の場面は、何の説明もなく吉澤が千日前を歩くショットから始まる。千日前オリオン座・新オリオン座が映る。吉澤が兄夫婦のアパートに下宿する浪人生時代のようだ。兄は草野大悟で、その妻は吉田日出子、というなかなかの豪華配役。こゝでは、しっかり吉田が胸を見せる。ちなみに彼女は同年の『あゝ声なき友』でも脱いでいた。
続いて、またもいきなり、山の中での隠遁生活が繋がれる。これには面食らった。吉澤は凄い髭面に変貌しているので、誰だか分からないし、ふんどし姿で棒を振り回す、ヤケクソのようなシーンが続く。多分、こゝから京都が舞台なのだろう。その後、フーテンの照子−岩崎恵美子が現れ関係し、他にもカーセックスの相手は、横山エリだと思ったが、いくつかの場面を経て、高校時代の憧れだった光子と再会する。光子との生活は幸福な描写に溢れるが、光子の友人の男二人と4人でのふざけ合いを綴ったシーンが開放感あふれる演出で特記すべきだろう。8ミリ映画作りのシーンもある。
しかし、吉澤が浮気をした相手、良子−工藤和子が妊娠したことで、光子と別れ、良子と二人、倉敷に戻って、良子の祖父−殿山泰司がやっているトンカツ屋を手伝う、やがてトンカツ屋の大将になる、という展開だ。金儲けにも余念がなく、趣味が釣り、というどこにでもいるようなオヤジになった吉澤を見て、なんだ、こんな俗っぽい映画だったのか、と思ってしまったのだが、しかし、最終盤はまた、唐突な展開が待っている、というのは、私は良いところだと思う。結局、全くもっていい加減なプロット展開だが、しかし、真に自由な映画だった、という感慨が残る。
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