コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 空、見たか?(1972/日)

なんとなくタイトル等の先入観で、主人公−吉澤健の青春時代の一時期が描かれる映画なのだろうと予想していたのだが、高校生から30歳前後ぐらいまでの、女性遍歴を中心とした流転の生活が描かれる映画だった。
ゑぎ

 舞台は概ね倉敷?〜大阪〜京都〜倉敷と推移する。最初に書いておくと、タイトルを現わすようなエピソードや科白は無い。ただし、カメラが空に向けてティルトアップするショットが一回だけある。

 冒頭はハンドボール部の練習風景。吉澤はキーパーだ。高校時代は、吉澤が付き合っている陽子−宮崎ふみえとの、若さにまかせた交渉シーンと、しかし吉澤が秘かに想っている優等生の光子−吉岡ゆりへのアタック等が描かれる。吉澤の父親で斎藤正治、また陽子の父親で小松方正が出て来る。

 大阪の場面は、何の説明もなく吉澤が千日前を歩くショットから始まる。千日前オリオン座・新オリオン座が映る。吉澤が兄夫婦のアパートに下宿する浪人生時代のようだ。兄は草野大悟で、その妻は吉田日出子、というなかなかの豪華配役。こゝでは、しっかり吉田が胸を見せる。ちなみに彼女は同年の『あゝ声なき友』でも脱いでいた。

 続いて、またもいきなり、山の中での隠遁生活が繋がれる。これには面食らった。吉澤は凄い髭面に変貌しているので、誰だか分からないし、ふんどし姿で棒を振り回す、ヤケクソのようなシーンが続く。多分、こゝから京都が舞台なのだろう。その後、フーテンの照子−岩崎恵美子が現れ関係し、他にもカーセックスの相手は、横山エリだと思ったが、いくつかの場面を経て、高校時代の憧れだった光子と再会する。光子との生活は幸福な描写に溢れるが、光子の友人の男二人と4人でのふざけ合いを綴ったシーンが開放感あふれる演出で特記すべきだろう。8ミリ映画作りのシーンもある。

 しかし、吉澤が浮気をした相手、良子−工藤和子が妊娠したことで、光子と別れ、良子と二人、倉敷に戻って、良子の祖父−殿山泰司がやっているトンカツ屋を手伝う、やがてトンカツ屋の大将になる、という展開だ。金儲けにも余念がなく、趣味が釣り、というどこにでもいるようなオヤジになった吉澤を見て、なんだ、こんな俗っぽい映画だったのか、と思ってしまったのだが、しかし、最終盤はまた、唐突な展開が待っている、というのは、私は良いところだと思う。結局、全くもっていい加減なプロット展開だが、しかし、真に自由な映画だった、という感慨が残る。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。