コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] そばかす(2022/日)

空。ティルトダウンして、海辺。砂浜に座っている三浦透子の後ろ姿。前進移動して、ぐるっと右横へ回り込む。この場所に座っている三浦のシーンは、この後3回ぐらい出てくる。海辺の映画。
ゑぎ

 ちなみに、ラストカットは、街中だが三浦からティルトアップして空を映すショット。開巻と対になる感じだが、これが、ずっと動的なカメラワークなのだ。この違いは三浦の心持ちの違いを表出しているように思う。また、三浦にカメラが寄って行って、画面右横へ回り込む移動撮影についても、ラスト近く、彼女が友人の結婚披露宴に参加し、スピーチ及び余興をするシーンで再度現れる。こゝでは、前進移動して右横に回り込み、太陽光を取り込んだ上で、逆回しのように、後退移動するショット。なので冒頭とはかなり異なるが、でも私は冒頭を想起した。

 もう一つ、印象的な反復を書き留めておきたいのは、『宇宙戦争』におけるトム・クルーズの走り方について、三浦が話す場面が2回出て来る部分だ。1回目はほゞ無視されるが、2回目は、一緒に映画館へ行くことを誘われる、という進展に繋がる。ちなみに、本作は静岡県浜松市を舞台としているが、映画館の場面は、私も大好きな横浜黄金町のミニシアターで撮影されていて、驚いたが嬉しかった。

 あと、三浦の家族のキャラが面白く、友人たちとのシーン以上に本作全体の面白さに機能していると思う。中でも鬱の父親−三宅弘城がもっとも良い働きをしたと感じるが、お祖母さんの田島令子の毒舌もいい。このお祖母さんにはもっと見せ場があっても良かったと思う。それは画面の特徴とも絡んでいて、本作の画面は屋内でも引きの画が多く、バストショット以上の寄りでの切り返しがほとんど行われない演出だったのだ。特に田島はロングショットのみだと思った。母親の坂井真紀にも寄りのショットはなかったのではないか。妊娠している妹−伊藤万理華の一番寄ったショットは、二階の二段ベッドに座っているウエストショットだと思う。

 それと、妹の夫−前原瑞樹も入って皆で焼き肉を食べるシーンは、妹の、お姉ちゃん、レズビアンでしょ、のクダリから始まり、核心をつく展開になる、全編でもクライマックスと云っていいぐらい興奮させられるシーンだが、ちょっと、コントみたいになったのはどうだろう。多分、これがいい、という人も多いと思うが、私は、ビンタでなくても良かったと思う。

 また、友人の中では一番のビッグネーム、前田敦子は、流石に特別感のある登場シーンが与えられており、続くキャンプの場面や、「シンデレラ」のデジタル紙芝居を一緒に作る場面などを通じて、三浦へ与える影響も一番大きい人物として描かれるが、街頭演説のシーンでの振る舞いについては、やり過ぎのように思う。完成した「シンデレラ」の発表を、三浦が途中で自粛してしまうのも気になる。シンデレラの帰結が気になってしょうがない。プロポーズを断られた王子は理解を示し、シンデレラは自由な人生を送ったのだろうか。それとも、継母や義姉たちと一緒に殺されたのだろうか。

#タイトルは主人公の名前の略か。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。