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[コメント] 砦のガンベルト(1967/米)

全編のほとんどが、小さな砦を舞台とするが、これが明らかに屋内スタジオにこしらえた、とてもチープな装置だし、色遣いも安っぽい。赤茶系の色調。
ゑぎ

 屋外ロケシーンも少しはあるが、西部劇らしい雄大な画面、例えば、青く広い空が目に焼き付くようなショットなんてものは、ほゞ無い。全体にちょっと豪華な単発テレビドラマといったスケールに感じてしまう。

 主人公のロッド・テイラーは、徹底したプロのガンマン及びスカウトとして一貫性を持って描かれているが、中盤以降、問答無用でインディアンを撃ち殺していく姿には、今見ると、いびつなものを感じてしまう。そう考えると、登場人物全員が、60年代後半の西部劇らしく、屈折していたり分裂気味であったりするように思う。

 砦の隊長(大佐)−ジョン・ミルズは、常軌を逸したパラノイアックな造型だ。ミルズに忠実な曹長−アーネスト・ボーグナインの頑なさ。少佐のルイス・ヘイワードが、インディアン娘を砦の一室に囲っているというのも酷い設定だが、彼が反乱を起こしかけて頓挫する場面も中途半端。実は、40年代のスターであるヘイワードがこんな役をやっているのも複雑な心境にさせられた。あと、ジェームズ・ホイットモアが酒飲みの斥候兵として騎兵隊の中では遊撃手的な役割を与えられているのだが、彼を活かしきれているとは云えないだろう。

 ただし、これら多彩な、第一線級を揃えた俳優陣のキャラ造型の複雑さによって、なかなか面白く引っ張られて見ることができるし、ゴードン・ダグラスの演出も、狭いセットの中でも奥行きを活かすことに腐心しているように感じられる部分もある。例えば、テイラーとワケありの女性−ルチアナ・パルッツィを砦の中の端と端に置いて、視線を交錯させる切り返しで見せる場面なんかはいい。

 あと、ボーグナインとテイラーの殴り合いで2人のわだかまりが霧消して、リスペクトに変わるといった展開は常套だが、やっぱりいいし、ボーグナインに対してテイラーが見せる早撃ちのデモンストレーション演出も良く出来ている。テイラーが両手にコーヒーカップを持っている状態からのクイック・ドロウというのが良いところ。

(評価:★3)

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