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[コメント] パリタクシー(2022/仏)

ファーストカットは路上に降る雨かと思ったが、洗車場の中の自動車のシーンだった。車内には運転手のシャルル−ダニー・ブーン。町へ走り出すタクシー。美しい色遣いの画面。
ゑぎ

 この序盤のトランペットによる劇伴から「酒とバラの日々」のテーマを崩したメロディかと思う。後半のディナーのシーン、レストランで流れている曲は「酒とバラの日々」だろう。他にも、エタ・ジェイムズダイナ・ワシントンの歌声に聴き惚れながら見ることのできるシーンもある。ちょっとあざとい使い方のようにも思うが。

 本作の良い点は、何と云っても92歳のマドレーヌ−リーヌ・ルノーの画面であり、そっけない登場から良いと思うし、彼女が映っているショットはラストまで全部いいと云いたいぐらいだ。対して、本作も回想シーン、フラッシュバックは感心しない部分が多い。

 最初のフラッシュバック−マットとのダンスシーンは、2人の顔をはっきり映さない。なのに、2つ目のフラッシュバック−舞台の衣装担当の仕事やレイの登場などの場面から、はっきりと若きマドレーヌ−アリス・イザーズが映る。これには違和感を覚えた(ラストまで見ると、こういう趣向だったのだと分かるようになっているが)。また、夫のレイの造型が類型的だし、DV場面はありきたりな描き方で宜しくないと思ったが、ガスバーナーを持ち出すという展開には驚かされた。

 実は、これで、フラッシュバック−回想の映像化を一切用いないで映画にすることができていたなら、という詮無いことを考えながら見てしまった。別にできなくは無いと思うのだが。いや、そこまで云わなくても、若きマドレーヌを数カットだけフラッシュバックしておいて、後は科白だけの回想でも、エンドロールの映像は成立しただろうし、私としては、その方がエンドロールに感激できたと思うのだ(いや、このエンドロールにもけっこう感激したのですが)。

(評価:★3)

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