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[コメント] SHE SAID/シー・セッド その名を暴け(2022/米)

1992年、アイルランドの海岸。映画のロケ撮影現場だ。犬を連れた若い女性がやってくる(『恋人はアンバー』でタイトルロールを演じていたローラ・ペティクルーだ)。
ゑぎ

 その女性−ローラ・ペティクルーは、スタフとして働き始める。次に、時空が飛んで、彼女が泣きながら街中を走るショットを繋ぐ。おそらく多くの観客は、冒頭のこの女性のことがキーポイントになる映画だろうと思いながら見ることになる。タイトルの「SHE」は彼女かと。

 全体にとてもスリリング。上手く見せている。社会的テーマ性とその告発の価値だけにとどまらない。映画として上出来だと思う。主人公は2人いて、NYタイムズの記者チーム、キャリー・マリガンゾーイ・カザンだが、いずれにおいても、緊張感ある場面を分担する。例えば、カザンが会うアーウィンという名の元ミラマックス関係者とのシーンが常に夜のレストランで犯罪映画のような緊迫感が醸成される。対して、マリガンには、ミラマックス側弁護士ラニーとのシーンがあり、2人の人間性を賭けたような会話の切り返しも、大そうスリリングなのだ。あるいは、修繕工事中のアーケードをマリガンとカザンが2人で歩くシーンなんかで、何か起こらないか見ていて怖いのだが、これはワザとこういう事故が起こっても不思議でないロケーションを選んでいるのだろうし、唐突にジョギングする女性のショットを挿入する繋ぎなども、とてもドキドキさせられるのだ(後にアシュレイ・ジャッドだったと分かる)。

 また、中盤、カザンがサンフランシスコからUKへ回る出張取材のシーンがあり、大都会NYとの対比の効いた、良い風景を導いている。しかし、ロンドンでのサマンサ・モートンへのインタビューシーンが強い造型だが、一点、フラッシュバック(回想)中の、若い(20代役の)俳優とのリレーキャストには、違和感を覚えた。それは、冒頭の女性(ローラ・ペティクルー)が、ミドルエイジのローラ−ジェニファー・イーリーにリレーしたのも同じだ。

 あと、マリガンとカザンの2人が、グウィネス・パルトローの邸宅を訪問するシーンで、同じような白いワンピースを着ており、「双子みたい」というような科白があるのだが、その次のシーン(オフィスを2人歩くシーン)でも、同じようなポロシャツみたいな服を着ており、面白かった。2人の相似性として、いずれの夫も、理解のある良い人に描かれている(というかそういう部分だけピックアップされている)ことも指摘できるが、これは、本題とは別のメッセージ性にも感じられる(リアルにそういう人物だったのかも知れませんが)。さらに、2人の上司のレベッカ−パトリシア・クラークソンや、編集長のアンドレ・ブラウアーがとてもカッコ良く描かれているのは、映画らしいと思う(これも、リアルにそういう人物なのかも知れませんが)。

(評価:★3)

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