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[コメント] フラッグ・デイ 父を想う日(2021/米)

ヘリの音。麦畑にヘリの影。逃走する車と追跡するヘリやパトカー。1992年と出る。ディラン・ペン−ジェニファーが、遺留品を引き取る場面での女性警官は、レジーナ・キングだ。
ゑぎ

 ジェニファーは父親が贋札犯だったことに驚いているよう。贋札を一枚触らせてもらって「美しい」と云う。なかなかいいオープニングだ。こゝから回想が始まり、少女時代の家族のシーンになる。走る自動車の中のジェニファーを映して、小さなズームを繰り返すのはヤバいと思ったが、以降、ズームはそんなに目立たない。

 ロードサイトの看板「ハッピー・ハイウェイ・ハリー」。このフラッシュバックが何度も挿入される。夕景の中のジェニファーと弟のニック。夜のハイウェイの車中で、父−ショーン・ペンの膝の上に座り、自動車の運転をする場面や、夜お母さんと喧嘩して出ていく父を窓から見るジェニファーのシーンも重要だろう。ジェニファーの母親はキャサリン・ウィニックが演じているのだが、最初はずっと顔がまともに映らない。初めて顔がちゃんと見えたショットが、飲んだくれて、乳首を出して寝ているショット、というのはちょっと可笑しかった。

 父親が出て行った先は湖の畔の家で、デビーという女性−ベイリー・ノーブルと暮らしているのだが、こゝでのひと夏の姉弟のシーンもいい。バーベキューで大きな炎を作り、面白がる父親。彼は燃やすのが好きらしい。また音楽はショパンが好き。父が撮った体(テイ)の8ミリカメラ映像。湖中に潜って耐える姉弟。そしてフラッグ・デイのパレード、打ち上げ花火と水陸両用車。このあたりまで、序盤は特に手持ちカメラを多用した、落ち着きのないドキュメンタリータッチで描かれる。それは8ミリカメラ映像も含めて、ショーン・ペンのミタメのショットが多いということにも一因があるのだろう。でも決まっている。今となっては古臭いと云ってもいいカメラワークだが、上手く見せて、緊張感が途切れない。

 ジェニファーが高校生ぐらいになると、リレーキャストして、ディラン・ペンに、弟ニックはホッパー・ジャック・ペンになる(いずれもショーン・ペンの実子)。中盤以降の父親ショーン・ペンの出鱈目ぶり、クズぶりの描写も上手いものだし、自作自演で自身を突き放す倫理観にも心震えるものがある。冒頭の追跡劇の顛末の見せ方、テレビモニターを見るジェニファーの目のクローズアップと、横転(回転)する自動車のカッティングなんかも瞠目するが、いかんせん、既にいろいろな映画で描かれてきた既視感も免れないのだ。また、大人になったジェニファーが、父親に対して激昂して怒鳴る場面が多くなるのもイヤなところだ。あと、ショーン・ペンの贋札作りのノウハウ習得や、贋札の製作プロセスは完全に割愛されるのも寂しいが、これは本作の眼目ではないということだ。つまり、本作の主人公は、ビリングの順番通り、ジェニファー役のディラン・ペンなのだから。

(評価:★3)

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