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[コメント] 暴力の街(1950/米)

二人のメキシカンの農場労働者(フルーツピッカー、果実摘みと呼ばれている)にフォーカスを当てるシーンから始まる。その内のポールが、影の主人公といってもいい役割りだ。ほゞ全編、彼をめぐる映画なのだ。
ゑぎ

 また、彼らメキシカンと白人たちとの対立(というか差別)を描いた映画でもある。まず冒頭近くで、ポールの家と、白人の青年ジョーの家の対比をする。戸外の水道水をシャワーにするポールと、綺麗な浴室でシャワーを浴びるジョーをマッチカットで繋ぐのだ。

 主演スターは、マクドナルド・ケリーゲイル・ラッセルで、ケリーは白人たちの町の新聞社に最近赴任した記者。対して、ラッセルはメキシカンの町(スリーピーホロウという名のコミュニティ)の週刊新聞社に勤める記者で、メイクでラティーノに成り切っている。いや、実生活でジョン・ウェインに愛されたことも納得できる(ウェインは南方美人好きだった)、とてもチャーミングな、メキシカンの女性に見えるのだ。

 お話は、スリーピーホロウのダンスパーティで、ポールたちとジョーたちが乱闘騒ぎを起こしたことに端を発し、ポールが警官を殴り、自動車を盗んで逃亡したことで、マスコミも巻き込んだ大ニュース、大騒動になっていく過程が描かれる。都会から応援で来た記者やレポーターが、白人住民を煽るような、誇張した(でっちあげた)ニュースを発信する部分など、マスコミ批判の視点で描かれていると思われるのだが、これらのマスコミに接するマクドナルド・ケリーがどうにもニヤケた表情に見えて、中途半端な描き方に見える面がある。ケリーは基本的に人権派で、ポールを守る行動に出るのだが、だからと云って、感激したラッセルがケリーにキスするのも安っぽい展開だと思う。

 ただし、ロージーらしい良い画面も多々ある。例えば、警官隊がポールを確保するシーンは、パイプライン敷設中の川沿いの見晴らしのいいロケーションで、小石がいっぱいある背景は、人工的で無機質なロージーらしい画面だ。あるいは、その後の警察署での縦構図、手前にケリーとラッセル、奥にポールが父母と抱き合うのを見せるカットだとか。縦構図だと、ケリーがポールを家に送るシーンもそうで、手前に車に乗ったケリー、奥に玄関で迎えられるポールを配置し、警察署のシーンに呼応する、つまり、観客に縦構図の反復を意識させるように演出していると思われる。また、沢山の暴徒がケリーの新聞社をめちゃくちゃにするシーンは、凄いバイオレンスシーンになっていて、これは、普通に驚かされる場面だろう。

 あと、白人青年ジョーの父親を演じるジョン・ホイトも重要な役割りを担っている。ケリーを除けば、彼だけが、白人社会の中で正義感のある人権擁護の行動を取る人として一貫して描かれており、いや、ケリー以上に彼がカッコいい人物に見えるのは、果たして意図通りなのだろうか。ちょっと違和感が残る。

(評価:★3)

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