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[コメント] アトランティックス(2019/仏=ベルギー)

これは一筋縄ではいかない不思議なテイストの作品だ。私の感覚では、傑作とまでは云えないが、力のある映画ではある。舞台はセネガルのダカールで、冒頭は建設現場のロングショット。
ゑぎ

 作業員たちが事務所へつめかけ、給料の遅配を抗議する。このあたりは、ドキュメンタリータッチと云っていい演出が続く。後景の巨大なタワーの外観が目立つ画面。序盤は、作業員の中の一人の男性−スレイマンが主人公かと思う。

 帰宅途中のスレイマンが描かれる場面。彼の見た目で、道路を挟んだ向こう側に、フラッシュのように女性が映る。これがアイダ(発音的にはアーダ)。二人は海に近い人気のない建物の中で抱き合う。続きは夜、と云って別れるアイダ。この二人のラブロマンスになるのかと思わせるのだが、こゝから、主人公はアイダに移行し、スレイマンは退場してしまう(以降出てこない)。なんか、こういう膝カックンな人を食ったプロット展開が続くのだ。

 アイダには、オマールという名の親の決めた(お金持ちの)婚約者がおり、結婚を余儀なくされるのだが、婚礼の夜に、新居の放火事件が起こる。これによって、もう一人の主人公とも云うべき警部補が登場し、犯罪映画(ミステリー)の様相を呈して来る。しかし、この警部補のキャラが体調不良で汗だく、というのが変なところだ。さらに、終盤は死霊まで出現するという展開で、もう唖然としてしまうのだが、まったく大真面目に、しかも図太い演出で見せるので、興味深く見てしまったのだ。ただし、死霊が憑依する対象(人間)は、けっこういい加減に感じられるのだが。

 さて、タイトルは大西洋の意味だが、海の側のバー(クラブ)が何度か出て来て、この場所が、アイダたちと死霊との中立地帯のような位置づけで描かれる。やはり、このバーの場面が、一番重要かつ面白いと思う。黄緑色のレーザー光線だろうか、雨が降るように黄緑の光が降り、アイダの黒い肌にあたるショットが美しい。また海に沈む夕陽のショットなども力強く、この監督(『35杯のラムショット』でヒロインを演じていたマティ・ディオップ!)のビジュアリストとしての才能を感じさせる部分だろう

(評価:★3)

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