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[コメント] いつか、いつも‥‥‥いつまでも。(2022/日)

全編に亘って小さなクスグりを絶え間なく繰り出して来て、とても面白く見ることのできる映画だと思う。唐突な怪我、水濡れ、服の破れ、テーブルの落書きなど何かの毀損のイメージが繰り返されるのも、それに寄与している。
ゑぎ

 毀損は変化や変貌、と云い換えてもいいかもしれない。それは人の変化だけでなく、庭のタンポポが鉢植えにされていたり、綿毛に変化したり、あるいは、待合室の壁の変貌といった部分もある。

 また、食べ物を作る場面、食事風景、テーブルに並べられた料理の真俯瞰ショットが多数挿入されるのも、本作の楽しいところだろう。紫芋のきんつば、東京まんじゅう(架空?)といったお菓子の使い方もいい。

 しかし、オフビートなクスグりへの志向は、微妙に違和感のある演出も多く生んでいる。例えば、冒頭の関水渚登場シーン周りの不思議な空気。洗面所の水の出しすぎ。関水の身体が痒いクダリ(いるか?)、猫の唐突な登場。高杉真宙の頬の絆創膏(いつ貼った?)。あるいは、叔母さん役の水島かおりの存在自体が違和感大ありだが、このキャラクターは本作の一番ワクワクする部分でもある。彼女は出てきただけで、期待してしまうキャラになっている。

 違和感というワケではないが、関水に、いつ恋心が芽生えたか?という疑問は残った。最初の2歳児の誕生日パーティで、自分にされるプライベートの質問を、高杉がはぐらかしてくれた時に、既に好意を抱いていたかも知れない。あるいは、テーブルに落書きした後の、海辺でのデコピンのシーン辺りからか。実は、私は、登場人物の感情変化の起点は明確にして欲しいタチなのだ。

 また、ほんの小さなズームインのショットが3カ所ぐらいある。例えば、お祖父さん−石橋蓮司が関水の逗留を説得する場面で、関水と高杉にそれぞれ、ほんの小さくズームインする。このあたりも私には奇異に感じられたが、ごくごく僅少な話ではある。全体に屋内の照明は良いものだと思った。

 さて、この映画は、先に書いた叔母さん−水島だけでなく脇役が皆良い、ということは特記すべきだろう。石橋蓮司はもちろんのこと、特に、家政婦キヨさん−芹川藍は、もうひとりの主人公、と云いたいぐらいだ。この人と関水の別れの場面が、本作のクライマックスではないか。脇キャラの造型の良さこそが、本作の一番のストロングポイントかも知れない。

(評価:★3)

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