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[コメント] 学生社長(1953/日)

開巻は鎌倉大仏と江ノ島。綺麗な富士山のカットで、松竹ロゴに言及する(楽屋オチの)科白がある。鶴田浩二川喜多雄二桂小金治の3人の学生が、外国人相手のガイドをする。
ゑぎ

 鶴田が社長、川喜多が専務、小金治は経理担当だ。つまり、タイトルは鶴田のことを指している。帰りの東京への汽車の中で、小金治が売上金を掏られたことで、プロットが転がっていく。

 スリは大坂志郎。新宿から追いかける鶴田。鶴田は、自動車会社(タクシー会社?)の車にむりやり乗って運転を始めるが、助手席には、その車の会社の社員、小林トシ子が乗っていた、というのがヒロインとの出会いの場面。このカーチェイスシーンは、国会議事堂が背景に見える交差点を経由して、銀座新富町の三吉橋に至る。車を乗り捨てた大坂は、東劇辺りの路地へ入り、鶴田も追うが、結局、築地川の側の道で巻かれてしまう。こゝで靴磨きとして登場するのが、もう一人のヒロインの角梨枝子だ。角は大坂とグルで、上手く逃がしてやったワケだ。

 本作には、もう一人、若手女優が出ており、鶴田ら3人が住むアパートの隣の食堂「ワンダフル」の娘役で、東谷暎子という人だ。出番は少ない、純然たる脇役ではあるが、小林よりも角よりも、ルックスは彼女が一番可愛いんじゃないかと思いながら見た。

 さて、自動車会社をクビになった小林の新居は偶然にも鶴田らと同じアパートで、プロットは小林の生き別れになった父親をめぐる話が中心になるのだが、スリの大坂や角の親分である、日守新一がその父親と分かり、さらにひどいスモールワールド的(世間は狭い的)展開になって行く。例えば、鶴田のことを支援する社長夫妻(社長は日守の二役、社長夫人は高橋豊子)の仲の良い料亭のマダムを桜むつ子がやっているが、桜は元スリで、スリの親分の日守とは旧知の間柄だったりする。ちなみに本作の桜むつ子は、なかなかの美人に撮られている。

 さてさて、鶴田をめぐる小林と角、小林をめぐる鶴田と川喜多、という2つの三角関係も描かれて、やっぱり、小林がそのカナメにいることは事実なのだが、実は、角が、小林に父親の真実(スリの親分だったこと)を明かした以降は、もう完全に角がプロットを牽引する。私には、後半からエンディングまで、角が主役じゃないかと思えるぐらいだ。ちょっとアホなところもあるが、鶴田に好かれるために、一所懸命更正しようとする彼女が、結局一番可愛く見える、儲け役だと思う。

 尚、カメラワークで特記しておきたい点がある。前半のカーチェイスシーンの中の固定ショットで、カット中に斜めに傾けるカットがあり、目に留まったのだが、終盤、アパートを出た小林を皆で捜す、短いカットを繋ぐ部分でも、斜め構図のカットがあったり、カメラを傾けるカットがある。

#備忘でその他配役等を記述します。

・冒頭、桂小金治はインド人をヒンドゥー語で案内するが、インド人の女性の中に北原三枝がいる。化粧で顔を黒くしているが、すぐに分る。

・社長の日守新一の会社の社員の中には青木富夫がいる。

・スリの日守の住処には、都鳥ボートハウスという看板。築地川での水上生活?鶴田と川喜多が、バイトで紙芝居を使った防犯促進をする場所は、数寄屋橋か。鶴田と角と大坂たちが喧嘩になる場面、及び、新橋駅から小林と鶴田が歩いて行った場所は、浜離宮恩賜公園の前の橋あたりか。

(評価:★3)

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