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[コメント] 恐るべき子供たち(1949/仏)

本作も随分と昔(日本初公開時だろうか)に、スクリーンで見ていたのだが、その際は、あまり面白いとは思わなかった、というかピンと来なかった。今回見直してみると、いや、凄い傑作でした。
ゑぎ

 まずは、開巻クレジットバックの扱いがメッチャかっこいいのだ。屋外の斜面のような場所に女性が左端、画面中央に台のようなものがシルエットで映っている静止画。これが、ラスト近くの、リーズの夢として種明かしされる部分は鳥肌が立つぐらい素晴らしい。台は、ビリヤード台だったと分かる。台の上には弟のポールが横たわっている。

 昔見たときの記憶では、ほゞ全編、主人公の姉弟の住居内のシーンだったと思っていたのだが、確かに近いものはあるが、クレジット開けが、学校の子供たちの雪合戦シーンだったというのは度肝を抜かれた。他にも、姉リーズの仕事場の場面や、リーズの結婚相手ミカエルの自動車事故現場のカット、上で書いた夢のシーンなど、わずかだが、目を瞠るような、効果的な屋外シーンが挿入される。

 また、全編通じて象徴的な道具立てが多数使われていて、その点でも非常に豊かな映画だと感じさせる。例えば、雪玉と毒玉、壁に貼付されたピンナップ写真(クーパーが目立つ)、一人二役、夢遊病と夢、車輪の回転とプロットの転換、姉弟の部屋の倒壊と二人の「出発」。

 確かに、中盤のリーズとポールのやりとり(姉弟ケンカ)には、うんざりするようなしつこさもあるのだが、ミカエルの邸宅へ姉弟、及び友人のジェラールとアガートが移ってからは、見事な緊張感なのだ。絨毯と衝立の使い方は、記憶通りの素晴らしさ。衝立を使って、広間の一角に転居前の狭い姉弟の部屋を再現する。こゝからが俄然面白い。アガートとポールがそれぞれ想い悩むようになるのは、唐突な感もするが(いや、以前の部屋での出会いのシーンで、一目惚れの演出も確かにあったが)、リーズのそれぞれに対する立ち回り方を描く部分から、さらに映画の緊張感が昂進し、ラストカットで頂点に達する。いやはや、これは凄い演出力だ。

(評価:★5)

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