コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] サイン(2002/米)

肝心のサインは、”滅亡”とは全く別の”何か”だった。その”何か”が、この映画のたった1つの救い。
Pino☆

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 その”何か”とは、言うまでも無く、「家族の絆」である。

 絶対絶命の危機を乗り越えたへス家には、奥さんの不幸な事故後、初めて家族の輪に血が通う。そして、その輪の中には、事故死した奥さんの姿が見えた気がした。

 おそらく、この「家族の絆」というテーマが無かったら、平均点以下の映画にしかならなかったと思う。恐怖の裏に隠された、このテーマこそ、この映画の命である。これによって、単なるスリラーとしての恐怖感だけでなく、ヒューマン・ドラマとしての感動も同時に味わうことができた。

 ストーリーは、ツッコミどころが全く無かったわけではなかったが、そこは策士M・ナイト・シャマラン。巧みな映像演出と音響効果で嘘っぽくなりそうなところを何とかカバーしている(と、最初は思ったのだが、後で考えてみると、このストーリーはかなり荒っぽいというか結構酷い構成だ。サインと言っておきながら、きっかけとなる殆どの出来事は実は偶然に発生しているのだから。<追記>)。

 特に、この映画では、立体音響が凄い。音像定位がリアルなので、後ろから聞こえる風の音、犬の吠え声、電話のベル等の単純な不意打ちでも簡単に引っかかってしまう(ちょっと汚い手だなと思ったが・・・)。

 人物によって、危機に対する受け止め方が異なるのだが、それを上手く表現できていたのは、役者の才能による部分が大きい。メル・ギブソンホアキン・フェニックスローリー・カルキンアビゲイル・ブレスリン。危機を予感させる感情表現が鍵の映画だったが、素晴らしい芝居だった(シャマランだけは???)。

 ただ、恐怖感の演出は、もう少し抑揚を持たせた方が良かったと思う。アタマから「いくぜ、いくぜ、いくぜ〜」という感じを出してしまっては、観客は皆、身構えてしまう。 これでは、恐怖を感じさせるシーンが引き立たないので(とは言いつつ、恐怖感は予想以上だったのだが)、温かい映像や平和な描写を交えて、緩急のある構成にした方が、もっと恐さが引き立ったのではないかと思う。ただ、9割方、恐怖の演出に主眼を置いた分、ラストシーンの安堵感と感動は予想以上に際立ったと言えないこともないのだが・・・。

 それと、本作は、911以降のアメリカ映画に多い戦争賛美的な表現が少なかったのも良かった。唯一、ホアキン・フェニックスが軍隊の入隊申込書を手にとるシーンは、それっぽいモノを連想させたが、侵略してくる宇宙人に対しても、戦うのは米軍では無く、平凡な一家族だったから、少なくとも『インディペンデンス・デイ』のような嫌らしさは感じなかった(後で考えてみると、宇宙人が絶対悪的な存在になっていることから、ブッシュがよく言う都合の良い悪vs正義という意味が込められていると思えなくもないが、少なくとも映画を見ているときは、そういう表現は感じ取れなかった。寝不足だったからかも・・・?)。

 最後に一言。映画の内容はさて置き、この邦題だけは、なんとかしてくれー!! 誤ったカタカナ表現を使うくらいなら、「兆候」とか日本語にした方がよっぽど良い。これだけは、『シックス・センス』(The Sixth Sense)から全く進歩が無い。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。