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[コメント] ブレスレット 鏡の中の私(2019/仏=ベルギー)

如何にもフランス映画という感じのミステリーで、抑制のきいた演出がシンプルに謎の深みを作り出している。そのせいか、一本の映画を観終わったなあという感じにさせてくれない、人の悪い映画でもある。それもフランス流、なのかなあ。
シーチキン

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







それに登場人物がみな、それぞれの役割を背負わされ演じているように見える中で、唯一、被告人である女の子だけが、多感で冒険的で衝動的な、思春期の真っ最中にある16〜18歳のようにも見えるし、或いは冷静にすべてを計算ずくで振舞っているようにも見えて、なんとも得体の知れない少女に感じられた。

最後まで見ていても、もやもやとした謎は解明されないままであった。このあたりは、最後の最後で何らかの示唆を明示するような、ハリウッドなんかとは一味も、二味も違う感じがする。

ラストシーンで、1年半にわたり義務付けられた足輪が外された。それは、彼女の無実を外形的に示すものでもあるはずだ。そして歩き出した彼女はすぐに歩みを止めて、ネックレスをはずして足首に巻きつけた。

それは長いことついていた足輪がなくなって、なんだか足首あたりの感覚に違和感を覚えてとりあえず、何かを巻いただけかもしれない。

しかし一方で、してやったりと外形的な無実をえたものの、自らの心底を慮って、自発的な有罪の印しをつけたようにも思える。この、少しイラつかせもする、もやもやっとした幕切れには何とも言えない。

それに、何度か肝心なところに登場する弟は、本当に純真で裁判のこともよくわからない幼い子どもなのだろうか。案外と姉の裁判のポイントをわきまえていて、意図的に振舞っているのか、それとも姉の意向に沿って敢えて姉に操られているのだろうか。

こういう悶々とした疑問が尽きることのない映画であった。

(評価:★4)

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