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[コメント] 偶然と想像(2021/日)

観る者をわくわくさせる偶然と、そして観る者の想像をかきたてる物語。まさに題名通りの映画。
シーチキン

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







第一話、第二話は完璧と言える。それに比べると第三話は物語こそ工夫されているが、想像という点で弱いようにも思えた。単に個人の好みかもしれないが。

第一話は二通りのラストが描かれるが、そのどちらが想像だったのだろうかと考えさせる。順番から言えば元カレにどちらをとるのと突きつけて、親友も元カレも失って一人残された女が、「よしておけばよかった、自分が立ち去ればよかったのに」と想像したようにも見えるが、どうだろうか。

自分がここでどちらを選ぶと切り出せば悲劇だなと、想像したから、自分らしくない、意に反するけども、ここは穏便に知らん顔して立ち去る、というのが現実的ではあるが、観終わったあとも、何度も頭の中で反芻する楽しみがある。

第二話も、最後のバスの中で一旦は名刺を持っていないと言ったのに、相手の男が結婚を控えて順調そうな人生を進もうとしているの知った途端に名刺を渡し、腐れ縁の復活を匂わせて終わる。この後、尊敬できた人も家庭も失った女性は何をするのだろうかと、あれこれと想像してしまう。

これらと比べると、第三話は物語が終わった後に何が起こるのかを想像するのではなく、彼女らの過去の思いはどういうものだったのかを、想像させるものではないかと思えた。

ボーイッシュだったらしい女性の、自分の感情のために闘うべきだったという悔恨、気持ちはわかる。それが人生にトゲのように刺さっていつまでも気にしている。そういうものは誰にでもあるのだろうし、それが性的指向に関わるものであるならば、なおさらでもある。そういう話として理解はできるが、理解であって、想像ではないように自分には思えた。

3話全体を通して、非常によくできた、完成された映画だとも思う。会話劇であっても、画づくりもぴたりとはまる心地よさ、まさにこの話の、このタイミングで、この構図、というシーンが幾つもあって、その点でも印象に残る映画であった。

(評価:★5)

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