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[コメント] LEGO ムービー(2014/米)

他愛のないお子様向けかと思ったら結構ガチなストロングスタイルで驚いた。メインターゲットは子どもに手を引かれて見に来た親だった。
ロープブレーク

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







冒頭、ライフハック人間へのシニカル描写で驚く。アメリカってライフハック万歳を疑わない国だと思ってた。

で、マニュアル人間(主人公エメット)もクリエイティブ人間(ワイルドガールやバットマンなどのマスタービルダーたち)もシニカルに描写するけど全否定はしないところが、新しいのか、単に日和った寸止めなのか感想に迷う。が、善悪二元論的批判でないのは好ましい。

驚いたのは、ポジティブシンキング(ユニコーン猫)への完全なダメ出しだ。

前年(2013年)に公開された『アナと雪の女王』では、アメリカの二大成功理論である自己解放と自己啓発の否定が隠れたテーマになっていて驚いたのだが、その翌年の子ども向け映画では、ポジティブシンキングまで否定されていたとは!マジ、アメリカってこれから良い国になっていきそう!?

ポジティブシンキングは、見たいようにしか現実を見ない思考に陥るので、なんも問題を解決しないから、ちゃんと現実を見て怒ろうぜっていうことを子どもと子どもを持つ親に向けて打ち出したのは素晴らしいと思う。

脱線するけど、日本では、ポジティブシンキングの親戚でより猛威を振るっている「感謝信仰」の害悪が大きいような気がする。私の狭い経験範囲では、シニアな中小企業経営者に、こいつに罹患している輩が多いように思う。

感謝信仰の教義は「何にでも感謝しろ」だ。嫌みを言われたら、ご指摘感謝します。裏切られたら、気づきの機会を与えて頂き感謝します。といつもニコニコ。で、これが素晴らしい人間像とされる。

こういう思考回路だと、常に自分中心主義にとらわれてしまうことに感謝教信者は気付かない。嫌みや裏切りを客観的事実に還元して相手の視座で考えたら、嫌みや裏切りと解釈した自分というものが第三者視点的に浮かび上がるものなのだが、そういう機会が感謝思考だと失われてしまう。結果、すべての出来事や相手は自分という悲劇の主人公を引き立てる脇役にしか見えなくなる傲慢な人間を作る。感謝は傲慢の父母なのだ。

だから、感謝教信者はこっそり自分の胸の内で感謝することをせず、人にも感謝教入信を勧めてくる。常に感謝している俺スゲー、おまえも俺のような人間になれと他人を見下しているからだ。

私は思う、大切なのは自分中心の「感謝」ではなく、他者という存在への「リスペクト」なのだ。

アメリカって、いろいろ問題はあるけど、こういう映画を大々的に作ってしまうところは正直に羨ましいし、見習うべきだと思う。

ポジティブシンキング一本槍のユニコーンキャットを揶揄するように、感謝教信者の犬を登場させる子ども向けアニメを作ったらどうなるんだろう。

そういうのは、仮面ライダーとか特撮の領分なのかな? それともそういう作品はもうあるけど私のアンテナが低くて知らないだけ?

最近、感謝野郎に接して辟易したタイミングでこの映画を見ちゃったんで、つい余計なことを書きました。シネスケの皆さん、すみませんでした。mOm

(評価:★5)

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