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[コメント] わが心のジミー・ディーン(1982/米)

実在するのか分からぬ神を信じる老婦人と、実在した、と過去形で語られるが故に永遠の青春スター、J.ディーンを愛する女達。回想シーンや、鏡を用いたショットによる、存在と不在、虚と実の曖昧さ。映画のセットの如く、表側だけ取り繕う女達の崩壊の劇。
煽尼采

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







徹底的に男を排除していく展開は、同監督の『三人の女』を彷彿とさせる。ジェームズ・ディーンの子を産んだと嘘を言っていた女と、胸に詰め物をして豊満に見せていた女、そして、本当に女になってしまった元・男、この三人が鏡に向かって踊るラスト・シーン。映画もまたその一つである「虚構」に捧げる、祝福とも呪いともつかぬダンスが、陽気であり、滑稽であり、戦慄的。

女になった男が嘘を曝露していく一方、他の男達は女達の台詞の中にしか現れない。見せるものと見せないもの、語られるものと語られないものの配分が、さすがに名匠の手腕。舞台である店内が、同じ場所でありながらもその様相を変える、という時間性を表す回想シーンが何度か挿入される事で、ラストの荒廃した無人の店内の映像に、時間という太い一本の軸が通され、その印象をより一層強化する。

(評価:★4)

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