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[コメント] ゾンビーノ(2006/カナダ)

「古き良きアメリカ」を再現したカラフルでシンプルな映像の愛らしいミニチュア感が好み。死ねば自動的にゾンビになる状況下で、ゾンビへの愛着が逆に生者の死をジョークと化す倒錯性。世界観そのものが、死せるアメリカ像=ゾンビ。
煽尼采

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







冒頭の、ゾンビ対策を行なう会社ゾムコンのPR映像が、なぜか白黒画面な上に、一昔どころかふた昔も三つ昔も前のテイストなのにまず面くらうが、同時にモノクローム映像の中のゾンビの姿に、ロメロの『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』を思い出したりもした。車の運転シーンでは、背景がいかにもハメコミ映像ですといった感じに仕上げられていて、昔の映画を連想させる仕掛けになっているのも面白い。お父さんがベッドで読んでいる雑誌が、『LIFE』と同じデザインのタイトル・ロゴなのに『DEATH』というタイトルになっていたり、所々にレトロな小ネタが効いていている。世界観がレトロであるとはつまり、世界観そのものがゾンビであるということだ。例えば『LIFE』は、とうの昔に休刊した雑誌なのだ。

どこかネオコン的な匂いのするゾムコンとゾンビの関係が、却って「古き良きアメリカ」像を実質的には破壊しているような形をとっているのが皮肉なところ。主人公の少年の隣家に引っ越してくる男が、ゾムコンが宣伝に使う「戦争の英雄」であること。かつてのゾンビとの戦争では、ゾンビ化した家族との殺し合いが行われたこと。老人はいつ死ぬか分からないから、たとえ温和な人物であろうと信用できない、といった台詞。首輪を付けて飼いならされたゾンビが、かつての冷蔵庫や掃除機や何やらのような、「家庭の必需品」になっていること。等々。

最近の映画ではタバコを吸うシーンは控える傾向にあるようだが、ゾンビのフェイドは死んでいるせいか、堂々と吸わせているのが笑える。

グロテスクさと諷刺の両方を利かせた作風は、ロメロのゾンビの正統な後継者ではあるが、『ショーン・オブ・ザ・デッド』と比べると、ネタの詰め込み具合やインパクトがかなり劣る。

(評価:★3)

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