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[コメント] 激流(1994/米)

“The Water Is Wide”の詞のように展開する本編は、サスペンスが家族劇と上手くパラレルな関係を結んでいる。が、アクションはやや浮いている、か。自然の美観を捉えたショットの的確さは嬉しい。
煽尼采

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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夫が殺されたと思っているゲイル(メリル・ストリープ)に向けてウェイド(ケヴィン・ベーコン)が言う「涙は?そんなに仲が悪かったとは」という台詞は、皮肉というよりは本気で意外に感じているような表情で言われており、この辺りにもウェイドの、彼自身言う所の「或る意味ではいい奴」でありながらもどこか感性が欠落した性格が見て取れる。ゲイルの表情は、余りの喪失感に表情すら浮かんでこない顔つきなのだ。

だが終盤での、実は生きていた夫トム(デイヴィッド・ストラザーン)が犬と共に飛び降りる崖があまりに低すぎる。ここは、まさに決死の覚悟で飛び込むくらいの高さがなければ、激流を下るのではなく崖を走った方が楽だし早い、という意味で話の筋が通らなくなるし、ダメ夫の精神的成長を見せるという意味でも説得力に欠ける。犬を、家族として受け入れられるかどうかの境界として用いる演出などは巧みなだけに、この小さな疑問点が殆ど致命的とも言えるのが残念。

オープニングは、オールやカヌーの細長い優美な形や、川面に映る像、橋の大きさと、その下を潜るカヌーの小ささなど、本当に抒情的で美しく、最も感動させられたと言っていいくらいだ。ラスト・ショットでの、「静かな激流」とでもいった白い飛沫と夕陽の美しさも感動的。川下りの場面よりも、ここでの川の流れ方の方が激しく見え、それがエモーショナルな激しさの表現になっている。

(評価:★3)

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