[コメント] 渚にて(1959/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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オーストラリアの地に降り立った、米国のタワーズ艦長(グレゴリー・ペック)は、当地の士官ピーター(アンソニー・パーキンス)と顔を合わせた際、「食事の前に一杯やっては?私はコーラにするが」と言う。異国に着いたタワーズが酒よりコーラを飲みたがる事からして、アメリカ人にとってコーラはやはり故郷の味なのだろう。そのコーラの瓶が、風に揺られてモールス信号を打ち続けていたという悲惨。飲みさしの瓶が、風に揺れるブラインドの紐に引っかかっている光景は、そこがもはや無人の地である事を印象づける。
なかなか潜水艦が調査に出ない前半。出たら出たで、「距離」や「時間」が全く演出されず、目的地に到着した潜水艦内にいきなり場面がつなげられているのには呆れた。
だがそこからが、この映画の本領発揮。潜望鏡で地上の無人状態を確認した乗組員たちが潜望鏡の取っ手を戻す「カチン!」という音と、彼らの失望の表情の連続。釣りをする脱走兵と、海から突き出した潜望鏡との会話。そしてコーラ瓶の衝撃。
ジュリアン(フレッド・アステア)は夢だったレースカーの煙の中で死んでいき、ピーターの妻ジェニファーは、映画の冒頭で夫が紅茶を彼女に出した場面のつなぎのようにして、安楽死用の薬入りの紅茶を夫に頼む。この二人が出逢ったのもOn the Beach(渚にて)、タワーズが、故郷で最期を迎えたいという部下たちの願いを受け入れて旅立つ場面でも、愛する女との別れの場はOn the Beach。潜水艦が浮上していた映画冒頭のショットとは逆に、海に沈んでいくショットに続いて、荒廃した町の光景が映し出されるが、倒れた看板に書いてあるのは「SAFETY ZONE」。それと、横断幕の「まだ時間はある」。ここでは文字は、「沈黙」(=無人)の表現でもある。
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