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[コメント] ザ・ベイ(2012/米)

ファウンド・フッテージもののパニックホラーの佳品。バリー・レヴィンソンはベテランらしからぬ若々しい作風をものにしている。ただ、2014年の日本の観客が見るとちょっとアレな点があって……。
MSRkb

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







海辺の町が謎の奇病で崩壊する、という話なのだが、この奇病の原因がウィルス……とややミスリードさせておいて、実は海洋汚染の影響で奇形巨大化した“タイノエ”が人間にも寄生してました! という真相。タイノエ(鯛の餌)というのはワラジムシとかフナムシに近い種の生物で、鯛などの魚の口内やエラに寄生して血を吸うやつら。特に口内に寄生しているやつは、開いた魚の口から大きな白いワラジムシみたいのが顔を覗かせているインパクト抜群の写真がネットにいっぱいUPされているから知らない人は検索してみよう。

で、町の医師からの報告を受けたCDC(アメリカ疾病予防管理センター)の職員が、この奇形巨大化したタイノエが原因だという真相に気づくわけですが、そこで職員がモニターで見ているのがダイオウグソクムシの写真なんですね。200X年には米海軍原子力潜水艦のタービン付近で巨大化したタイノエ(台詞では学名で呼んでたと思いますが)が見つかった……もしかしたらこの町の海でも……というノリで。

いやね、ダイオウグソクムシとタイノエはどちらも等脚目ということで近い種ではある。見た目もわりと似てるし。そもそもパニックホラー映画で、こういった種類のいい加減さ・テキトーさでもって煽るという手法自体はよくあるわけだし、それを否定したいわけじゃない。だが不幸にも、2014年の日本に生きる我々は、ダイオウグソクムシのことをニュースでよく見て知っているわけじゃないですか。あいつらはエサをぜんぜん食べなくても長いこと生きていられる生物だって知ってるし、デカいナリして水槽の底でじっとしている様がイメージに焼き付いてるし、最近じゃあキャラクター商品も出てきた。だからここでダイオウグソクムシがばーんと画面に登場すると、うーん、ダイオウグソクムシなら別に恐くないんじゃね? まあ見た目は気持ち悪いけど、小食なわけだし……と、若干冷めてしまうわけですね。

2012年制作の本作、間を置かずに日本でも公開されていればこういった種類の微妙な感想を抱く人もそんなに多くなかったと思うのだけど、残念ながら劇場では若干の失笑ムードがありました。シネマカリテもそこらへんを読んで、劇場ロビーの水槽でオオグソクムシを特別展示してました(ダイオウグソクムシよりかは小さいけど、それでも10センチ以上はある)。一応ネタバレ配慮のため、『ザ・ベイ』関連だとは一言も触れず、同時期に同館で公開されていた『グランド・ブダペスト・ホテル』のPOPと共に展示する、というミスリード(?)を行ってましたが、『ザ・ベイ』鑑賞後にロビーに出るとオオグソクムシ、というのはなかなかほっこりするものがあって良かった。いやいいのか。まあでも作品自体は悪くないよ。

2014/06/03(火) 新宿・シネマカリテにて鑑賞

(評価:★3)

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