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[コメント] 東京暗黒街・竹の家(1955/米)

情無用の街』のリメイク。ということは脚本ハリー・クライナーのみならず撮影ジョセフ・マクドナルドも両作に共通するスタッフだが、一方が黒白・スタンダード、他方がカラー・シネスコという点も含め、ルックに関して類似を見出すことはほぼ不可能だ。敢えて優劣をつけるならば、むろんこちらが上だ。
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**ネタバレ注意**
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サミュエル・フラーもまたシネスコの名手だ。スコープ画面の展開力に優れているとでも云えばよいか。フジヤマを背景に置いた雪景色に蒸気機関車を横切らせようとするオープニング・シーンからすでに顕著なように、たっぷりと奥行きを取って空間を大きく捉えたカットが目立つ。その奥行きは、たとえば、国際劇場での「春のおどり」稽古シーンにおけるトラックバックのように大胆なカメラワークによっても展開されるが、カメラの移動やフォーカスの調節によらない方法でもワンカット内で変化がつけられている。すなわち「障子」や「簾」といった空間を仕切るきわめて日本的な住設備の利用である。ロバート・スタックが潜入捜査の一環としてパチンコ店の主人からみかじめ料を要求するシーン、反撃に遭ったスタックが倒れ込んで障子を突き破ると、奥にロバート・ライアンらがたむろする部屋が出現する。主演者の登場方法としては実に意表を突くものだ。また、スタックと山口淑子の寝床を仕切る簾がふたりの間の複雑なロマンス性を象徴するムードを作り上げる。

したがって、以上は空間の特性を活かすことに敏感なフラー演出の実例と云うこともできる。その最たるものは云うまでもなくラストシーンの屋上遊園地だろう。日本の警官たちがまるで遠慮なしにバンバン発砲しているのも嬉しいが、何と云っても水平回転式の観覧車が最高のロケーションだ。ロングで見た際の外観も異様な威容だが、雄大に回転しながら銃撃戦が繰り広げられ、そしてライアンの最期が刻まれるなんていうのはまさしく「これぞアクション映画!」である。このように、ロケハン中にどんどん構想が湧いてきたのではないかと想像される演出が全篇にわたって持続する。率直な感想を述べれば、この映画は日本国民の誇りだ。

(評価:★4)

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