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[コメント] クリーン(2004/カナダ=英=仏)

「生活を変えなきゃ」「人間は変われる」という台詞が頻出し、そもそもこれが音楽の映画でもあることを告げる開巻間もなくのMetric“Dead Disco”では‘I know you tried to change things’と歌われる。「変わること」の映画。だが、本当に人は変われるのか。アサイヤスは慎み深い優しさをもってその可能性を信じてみせる。
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これは優しい映画だ。そして勇気を与えてくれる。いくらでも煽情的に扱える題材だが、アサイヤスは慎み深くそれを回避し、生きることの厳しさを正面から見据えつつも優しくマギー・チャンを見守っている。アメリカ映画に学んだフランス人監督として、またカナダに始まりフランス・イギリスを通過してアメリカで幕を閉じる映画として、量産型商業映画から距離を置くところの驚きを伴う省略を駆使してドラマを語りながら、「給仕中の転倒」「動物園での行方不明」といった約束事の実行をためらわない「映画」に対する忠実を表明する。

役者は皆すばらしいが、とりわけニック・ノルティに心を動かされた。ノルティがマギー・チャンのサンフランスシスコ行きを後押しするシーンでは涙をこらえることができない。アサイヤスが自身を最も強く投影したキャラクタもまたノルティだろう。必ずしも厳格ではないエリック・ゴーティエのカメラも大らかで美しいと云いたい。

(評価:★4)

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