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[コメント] 孫文の義士団(2010/中国=香港)

仲間の招集・計画立案・訓練を軸とする「準備」の前半部と「本番」の後半部から成るカタルシス爆発に特化した構造は『ロンゲスト・ヤード』『特攻大作戦』などを頂点としたスポーツ映画や広義の戦争映画にしばしば採用されるものだが、この映画の面白さの瞬間最大値は三池崇史十三人の刺客』も上回る。
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街セットの破壊ぶりがのっぴきならぬ状況をスペクタクルに象徴し、ドニー・イェンレオン・ライの優れた個人芸が各人の強力なエモーションを表現して、なおかつ映画に香港製らしいけれん味を加える。しかしこの後半部が活きるのは、とりわけキャラクタリゼーションに手を抜かなかった前半部の演出のためだ。初め「不細工なお嬢やなあ」としか思われなかったサイモン・ヤムの娘クリス・リーのことがいつの間にか愛しくて堪らなくなっており、彼女の散りざまには涙を抑えることができない。というのは決して観客の恥ではなく、演出家の腕によるものだ。俥を引くニコラス・ツェーは人格の善良さを強調されるばかりで戦闘力は付与されず、それはワン・シュエチーの息子ワン・ポーチエにしてもそうだ。それでも彼らは強大な敵を前に一歩も退くことがない! あるいは、これらの「キャラクタリゼーション」については次のように云うこともできるだろう。彼らは同一の目的を共有して行動するが、その動機においては各人各様である。この「異-同」の按配こそが感動的なのだ。歴史に材を取りながらも荒唐無稽な活劇であるこの映画に何らかのリアリティが存するとすれば、それもまたこの点においてだろう。

(評価:★4)

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